QUICK資産運用研究所=西本ゆき
日本で新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が解除されたが、世界的な感染者拡大にはいまだ歯止めがかからない。コロナの最前線で戦う「医療」に関連した銘柄は、株式市場で注目が集まるセクターの一つだ。医療をテーマにした投資信託の運用成績もここにきて回復が際立っている。
国内公募の追加型株式投信(ETF除く)のうち、主に医療関連企業を投資対象とするファンドを抽出し、22日時点で純資産総額(残高)の大きい順にランキングした(図1)。残高上位5本で年初来リターンにバラツキはあるが、どれも小幅なマイナスかプラス圏内に戻している。
■ゲノム関連が好調
上位5本のうち年初来リターンが最も高かったのが、残高2位の「グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)」(02312191)で、18.0%のプラス。3月17日に今年最低の基準価額(8414円)をつけてから、5月22日時点までで60.9%上昇している。日本を除く先進国株式の指数「MSCI―KOKUSAI(除く日本、配当込み、円ベース)」と比べても堅調ぶりが目立つ(図2)。
同ファンドは世界の株式の中から、ゲノム(全遺伝情報)技術に関連するビジネスを手掛ける企業を選んで投資する。最新の月次レポート(4月30日時点)によると56銘柄に投資し、規模別では中小型株式が約7割を占める。組み入れ比率1位は遺伝子解析機器大手の米イルミナ、2位は遺伝子検査サービスを提供する米インビテ、3位はスイスのゲノム編集大手のクリスパー・セラピューティクスと並ぶ。
レポートによると、4月のパフォーマンスに貢献した銘柄の一つが米国のゲノム解析機器企業。新型コロナウイルス感染症の検査で中心的な役割を果たしていることが評価されたという。
■今後は「優勝劣敗」も
残高首位の「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次)」(03316042)の年初来リターンは0.4%のマイナスだったが、コロナ相場で今年最低の基準価額(7825円)をつけた3月24日から、5月22日時点までで31.4%上昇している。
同ファンドは世界の株式のうち、製薬やバイオテクノロジーなどの医療関連企業に投資する。4月30日時点の月次レポートによると71銘柄に投資しており、組み入れ上位は米医療保険サービス大手のユナイテッドヘルス・グループや製薬大手の米ファイザー、英製薬大手アストラゼネカなど。新型コロナウイルス用ワクチンの臨床試験を開始した企業や、コロナ対策用関連の医薬品販売が好調だった企業が上位に入っている。
運用担当者はヘルスケアセクターの株価について「景気への影響が他のセクターと比べて相対的に小さいことや、一部企業の治療薬に対する期待が高まったことなどから株式市場(の平均)を上回る上昇となった」とコメント。運用方針では「今後、バイオテクノロジー技術の発展や、医薬品、医療サービスへの価格抑制圧力は企業間のグローバルな優勝劣敗をもたらすと予想され、個別銘柄の選別がより重要」としている。
◇「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次)」月次レポート(4月30日時点)
◇「グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)」月次レポート(4月30日時点)
◇「フューチャー・バイオテック」月次レポート(3月31日時点)
◇「ピクテ・バイオ医薬品ファンド(毎月決算型)為替ヘッジなしコース」月次レポート(4月30日時点)
◇「野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース 為替ヘッジなし 資産成長型」月次レポート(4月30日時点)
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