新興企業向け株式市場で東証マザーズ指数が1日、節目となる1000を1年半ぶりに回復した。国内で新型コロナウイルスの感染拡大が収束しつつあり、国内経済が本格的に再始動している。感染の第2波を警戒する声が多いなか、今後も新興株の買いは続くのか。市場関係者に見通しを聞いた。
■「個人投資家の物色広がる、eスポーツなど需要拡大か」
宇田川克己・いちよし証券投資情報部課長
マザーズ指数が1000を回復したことで個人投資家の間でリスク選好の姿勢が強まり、物色の幅が広がってきたことがうかがえる。新型コロナの感染拡大が収束しつつあることを受け、バイオ関連など特定のテーマに向かってきた短期筋の資金が「アフターコロナの生活様式」に移りつつある。
たとえば小売店の営業自粛期間に電子商取引(EC)は一段と浸透してきており、ネットで買い物をする流れは実店舗の営業再開後も続きそうだ。コロナ禍で急速に普及した在宅勤務も今後定着していく見込みで、テレワーク関連銘柄も引き続き買われやすい。
また、1つの会場に大人数を集めるイベントの開催が難しくなる半面、eスポーツなどは需要拡大が見込めるなど投資テーマが広がりつつあり中小型株は堅調に推移するのではないか。
■「現状は期待先行の買い、時価総額比で売上高小さい企業には警戒」
窪田真之・楽天証券経済研究所チーフストラテジスト
東京都が1日から幅広い業種で休業要請を緩和したことを受け、投資家心理は上向いた。ただ、経済活動再開への期待が日増しに膨らむ半面、東証1部の大型の製造業や百貨店などは業績の回復に時間を要するとみられ、期待と現実の間にはギャップがある。投資家の資金は足元で成長を続けている電子商取引(EC)やテレワーク関連の中小型銘柄に向かっているようだ。
マザーズ指数は節目となる1000を上回ったが、あくまでも期待先行の上昇だろう。マザーズ市場では業績の成長を伴わないまま話題性を手掛かりに上昇した銘柄も少なくない。構造改革で利益水準の改善を図ることができるが、時価総額に対して売上高が小さいままの企業については特に警戒が必要だ。〔日経QUICKニュース(NQN)寺澤維洋〕