中国が米国産大豆の輸入を一時停止する意向だと1日、複数メディアが報じた。成り行き次第では年初に結ばれた米中の「第1段階の貿易合意」の破棄という事態まで予期されるだけに、市場関係者の間では懸念が広がる。この事態に至ったのは中国によるブラジル産大豆の大量購入が影響したとの声が聞かれた。
■米国大豆や豚肉の輸入停止
ロイター通信は1日、米トランプ大統領が香港への優遇措置を撤廃する考えを示したことへの対抗措置として、中国政府は国有企業に対し、米国から大豆や豚肉の輸入を停止するように指示したと報じた。2020年1月、米中両国は貿易交渉の「第1段階」の合意文書に署名し、中国は大豆などの米農産物を大量に購入するとしていた。そうした中での今回の措置に、大豆相場へのある程度の影響は否めないだろうとの声が聞かれた。
■ブラジル産大豆を大量購入
対立が深まる米中関係で、中国があえて「米国産大豆の輸入停止」というカードを切った背景には中国のブラジル産大豆の大量購入があるとされる。ブラジルでは天候の良好さと生産性向上の影響で、20年の大豆生産量が同国で過去最高の豊作となると予想されている。また現地通貨のレアルが過去最低の水準で推移していることもあって、ブラジルの大豆生産者の他国への輸出意欲は例年に増して強い。
この状況に目をつけたのが中国だった。米ブルームバーグ通信は中国が先週、ブラジルから約10カーゴ(約60万トン)の大豆を購入したと報じた。今後もブラジルから大規模な購入が見込まれる。住友商事グローバルリサーチの本間隆行経済部長は「米国との間で、何かが起きたとしてもブラジルから買えばいいという余裕が輸出停止の指示に影響したのは否めない」と指摘する。
ただ現状では大豆先物の相場自体への影響は限定的との見方も多い。大豆の国際指標とされるシカゴ大豆先物(期近)は4~6月はおおむね1ブッシェル8ドル台の安値圏で推移している。日産証券の菊川弘之主席アナリストは「足元の大豆相場が低水準である以上、投資家としては売りにくい状況が続く」とみていた。
〔日経QUICKニュース(NQN)山田周吾〕