5日発表の5月の米雇用統計に衝撃が走った。非農業部門雇用者数について市場では800万人ほどの減少を想定していたが、ふたを開けてみれば250万人増。経済統計の予想のプロであるエコノミストも驚きを隠さない結果だった。このまま米経済は新型コロナウイルスを克服し経済拡大の基調へと戻ることができるのか。エコノミストのコメントをまとめた。
<ING>
経済活動再開のペースが遅く調査期間中に1200万人以上が新たな失業保険申請をしたことを考えると、驚くべきことだ。ADP雇用統計は予想よりも強かったが、それでも276万人の雇用者数減少を記録しており、これは最大の経済データショックである。
失業率の算出に使われる家計調査は、さらに強烈だった。雇用者数は383.9万人増加しているが、失業者数が209万人しか減少していないことを考えると、新規雇用者数はどこからともなく増加しているようだ。回答率がかなり低いうえ回答者自身の認識もあいまいと思われ、混乱感を増大させている可能性がある。
今回の雇用統計は他の指標と異なる結果を示しており、当然ながら疑問は残る。しかし公式な指標であり表面的には素晴らしい。これは米国経済が非常に力強く回復できることを示唆しており、市場関係者は経済見通しを大幅に上方修正する必要がある。
雇用の回復は小売業と医療関連産業が徐々に再開を始める中で続くだろう。それでも注意が必要である。ほとんどのレストランや小売業者は、ソーシャル・ディスタンスの影響で顧客数が制限される。パンデミックが発生する前と同じ人数のスタッフを必要とする可能性は低い。多くの企業は休業状態の店舗を抱え、採算が合わないと考えているだけかもしれない。特に大都市では、オフィス街はしばらく閉鎖されたままで顧客の流れもない。
世界的な経済活動の低迷を考えると、製造業や専門サービス業の多くが企業収益の悪化や債務水準の上昇という新たな経済環境に直面している。大量の従業員を必要としないかもしれない。また、今日のような大規模な雇用統計が発表された後でも、米国の雇用者数は2月に比べて1955万人も減少していることを忘れてはならない。まだ先は長い …
<スタイフェル>
最悪のシナリオから改善している可能性を示唆している。名目で250万人の雇用が増加したことは正しい方向への歓迎すべき一歩ではあるが、5月の増加は経済活動が制限されて以降に喪失された雇用の約10%を占めるにすぎず、失業率は2桁台を維持している。13%の失業率と約2000万人が職を失う長期的な損失に加えて、緩やかな就業増では過度に「興奮」することは難しい。
広範な経済がゆっくりと再開するにつれ一時的に解雇された個人の多くは、すでに職場に呼び戻されている。しかし、健康面や経済的な制約が残る中で、より恒久的な失業という状況に直面する人も多いかもしれない。言い換えれば、5月の増加が雇用創出の継続的な改善傾向を反映しているのか、それとも単純に定員を減らして再雇用するために必要な最低限の労働力が戻っただけなのかは分からない。結局、米国の労働市場の回復という軌道は、米国の企業と消費者が通常通りビジネスにどれだけ早く戻るかに大きく左右されることになる。
<CIBCキャピタル・マーケッツ>
5月末に向けて各国が経済を再開し、米国では新規の失業保険申請件数がすでにピークを付けていた。米国経済は今後も失われた雇用の一部を取り戻し続けるだろう。雇用の伸びは歴史的に見て大きいが、3月から5月の急激な落ち込みと比べると、緩やかな伸びにとどまる。さらに、 COVID-19の拡大を防止するために一部の産業には継続的な規制がかけられている。最近の雇用喪失に起因する需要の減退により、2021年においても雇用は新型コロナの感染拡大前の数と比較して抑制されたままであろう。