足元では、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染第2波が警戒され、株式市場は調整色を強めている。ジョンズ・ホプキンス大学の集計によるとCOVID-19の感染者は、世界で890万人に迫っている(6月21日時点)。最も感染者数の多い米国では、感染収束の目途が立たない状況となっている。中でも、早期に経済活動を再開したテキサス州、カリフォルニア州などで日々の感染者増加ペースが過去最高を記録。米国全体で見ても、感染者数の増加ペースが再び加速傾向となった。
米国は経済再開と感染を防ぐためのロックダウンのジレンマに直面した状況となっている。加えて6月に入ってから激化した白人警官による黒人男性暴行死事件を発端としたデモ活動の影響も懸念される。米国内における感染拡大傾向から、アップルが営業を再開したフロリダ州などで一部店舗の再閉鎖に踏み切るなど、経済活動への影響も再び高まりつつある。
■米大統領選にも影響
11月に米大統領選を控えたトランプ米大統領にとって難しいかじ取りが続きそうだ。同大統領は経済活動の再開を積極的に推進しているが、感染が収束しない様であれば、再び経済封鎖に迫られる局面も到来しよう。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスが集計した各種世論調査の支持率平均は、19日時点でトランプ氏が41.1%と、大統領選を争う米民主党のバイデン氏(50.6%)との差が今年最大となった。
トランプ米大統領は20日、オクラホマ州タルサで3カ月ぶりに選挙集会を開いたが、演説会場となったアリーナは空席が目立ち、屋外会場での演説は断念された。なお、首都ワシントンの連邦地裁が20日、ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の暴露本出版の差し止めを求めた司法省の主張を棄却した。これにより、ボルトン氏の暴露本は23日に予定通り発売される可能性が高まった。経済面だけでなく米国における政治面の不透明さも株式市場の上値を押さえそうだ。
■感染ペース緩まぬ新興国
また、新興国での感染拡大も歯止めがかかっていない。19日、ブラジルでは1日で5万4771人が感染し、1日の感染者数としては過去最高を記録。この数は世界各国における1日の増加数としても最も大きい数字となった。これを受けて同国はアメリカに次ぎ、国内の累計感染者が100万人を突破した。インドも感染拡大ペースが一向に緩む気配が見られない。
この日の株式市場は、世界全体で広がるCOVID-19の感染拡大を受けて、改めて先行き不透明感を警戒する展開となりそうだ。
■注目集めるCTA
日本においても、東京都の感染者数が4日連続で30人を超えるなど、東京アラート解除以降、じりじりと感染者が増加する傾向が続いている。日本のCOVID-19被害は他国と比較して相対的に少ないものの、COVID-19の感染が拡大する前の2019年10~12月期にすでにマイナス成長(実質GDP、前期比年率換算)となっていたことから、海外における経済成長の鈍化が、今後の国内成長率回復の重荷になることも考えられる。
短期的な値動きでは、短期筋と言われるCTA(商品投資顧問)の動向が注目を集めそうだ。下のグラフは3月以降のS&P500種株価指数とヘッジファンド・リサーチ社が算出するグローバルヘッジファンド指数のうち、マクロ/CTA戦略の値動きを示したものだ。
3月の株価指数急落以降、マクロ/CTA指数は株価指数の上昇と反対方向に推移することが多かった。ただ、6月中旬の急落以降、マクロ/CTA指数は株価指数の動きと同じ方向に推移した(赤点線)。
しかし直近、16~17日にかけてはS&P500が0.36%安となる中、マクロ/CTA指数は0.24%高となった(赤実線)。再び逆方向に動いたことになる。
仮に、CTAが株式に対する姿勢を「ロング」から「ショート」方向に舵を切ったのであれば、足元のCOVID-19の感染拡大は早期に収束することが望まれそう。月末の年金基金によるリバランス、7月のETF分配金支払いに伴う株式の売りなど、需給的に株式市場にとって売りが出やすい時期でもあるため、仕掛け的な売り崩しに警戒したい局面でもある。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)