中国とインドの国境係争地での軍事衝突が6月に起きた。インド側はその後、相次ぎ対中制裁策を打ち出しており両国の関係は悪化している。世界的な株式相場の上昇のなか、現時点では中国の関連株に目立った下落はみられないが、インド側の怒りが収まる兆しは見えず、気がかりな材料となっている。
■アカウント閉鎖
中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」は今月、インド大使館の要請に応じ、同国のモディ首相のアカウントを閉鎖したと発表した。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会見の写真を含め投稿もすべて削除した。インドは6月末、ウェイボなど中国の59のアプリを禁止したばかり。今週には、ニューデリーのホテル協会が中国人の宿泊禁止を通達した。
相次ぐ対中制裁策の背景には、同国内の反中感情の高まりと中国製品ボイコットの動きがある。中国スマホメーカーの小米(シャオミ、@1810/HK)は同国で、店名をインドで親しみやすいものにして販売を始めたという。小米はインドのスマホ市場の3割を握るシェアトップ。小米のインド事業の責任者は「反中感情はSNS上にとどまる」と話したというが、インドでの工場建設が中断しているとの報道があった中国自動車メーカーの長城汽車(@2333/HK)とともに、状況が懸念される。
中印関係の悪化は、世界の供給網(サプライチェーン)にも飛び火する可能性がある。台湾の電子機器製造の鴻海(ホンハイ)精密工業(@2317/TW)は3日、中国工場からインド工場に向けた部品輸出が滞っているとの現地報道をめぐり「インドの税関処理に従い通常通り輸出が進んでいる」との声明を出した。米アップルなどのハイテク企業のほか、自動車などの世界的大手が中国からインドに部品を搬送してサプライチェーンを形成しているだけに、不安感が漂う。
■シェア奪回に虎視眈々
一方、漁夫の利を狙う勢力もある。韓国のサムスン電子(@005930/KO)は、小米後退に伴い、インドでのシェア拡大が見込まれる。聯合報(電子版)などの台湾メディアは、インドでゲーミングスマホを販売する華碩電脳(エイスース、@2357/TW)が、小米ボイコットの恩恵を受けるとの見方を伝えた。
中国の2019年の統計では、中国にとってインドは世界第7位の貿易相手にすぎない。このため、市場では「最大の貿易相手である米国との貿易摩擦のような深刻な影響は発生しない」(輝立証券ディレクターのルイス・ウォン氏)との見方は多い。実際、このところの中国株高を受け、小米株は上場来高値圏、長城汽車株も上昇基調にある。中国のネット上には「(インドは自分が)米国だとでも思っているのか」との皮肉も聞かれ、中国側には余裕の姿勢も目立つ。
それでも、火種はないに越したことはない。インドは7月に入り、対中関係の悪化を背景にロシアからの戦闘機購入を決めたと伝わった。両国に何かが起きれば地域の緊張が高まるのは必至。株式市場も無傷ではいられなくなる恐れがある。(NQN香港=桶本典子)