7月上旬の世界市場は米株を中心に落ち着いた展開だった。10日に米商品先物取引委員会(CFTC)が公表した7日時点の建玉報告を見ると投機筋が貴金属で買い持ち高をやや積み上げていた。足元で金価格が上昇しているが、投機や純投資のポジションが入り乱れている可能性がある。
■金、銀、銅先物のポジション
投機筋は金先物の買い建玉を継続てきに積み上げている。価格も歩調を合わせるように上昇している。ただ、投機筋はここにきて売りポジションも積み上げており差し引きではそれほど買いに傾けてはいない。
金先物の相場よりも上昇ピッチが加速しているのが銀先物だ。買い持ち高が増えているようにみえるが、売り持ち高も徐々に増えており差し引きではほぼフラット。少なくとも銀相場の上昇を投機筋が先導している様子は乏しい。
銅先物も上昇が加速している。投機筋は買い持ち高を引き続き増やしており、差し引きで買い越し幅を拡大させた。
■為替のポジション
ドル指数に対し投機筋は目立った動きを見せていない。一頃のドル売りにポジションを傾ける動きもひとまず落ち着いたようだ。
これは主要通貨別のポジションでも同様の傾向が現れている。合成したポジションではむしろドル売りポジションが減少傾向にある。一方でドル買いのポジションも縮小しており、差し引きではこちらもフラット。主要な通貨の相場は引き続きボラティリティの低い展開が続きそう。米国でも長期金利が歴史的な低水準で安定し始めているだけに、金利差を背景にしたトレーディングも手掛けにくいのかもしれない。
■米株のポジション
投機筋はE-MINI S&P500先物で引き続き売り建玉を縮小させた。ただ、買い建玉も小幅に減少しており、ポジションの傾きに大きな変化は見られない。
VIX先物ではふたたび売り残が増加した。徐々に積み上がってきている。コロナ・ショックによる相場急変の直前のポジションに比べればまだ少ないが、このまま増え続けていくと原指数であるVIXそのものを押し上げる要因になり得るだけに注意が必要か。
<金融用語>
シカゴIMM投機筋ポジションとは(CFTCとは)
CME(シカゴマーカンタイル取引所)の一部門であるIMM(International Monetary Market)で取引される通貨先物に関する投機筋の買い建て玉、売り建て玉の枚数の変化数値。米国ではCFTC(Commodity Futures Trading Commission=全米先物取引委員会)の元、各先物商品の未決済ポジション・データの公表が義務付けられており、その一環として公表されている。毎週火曜日の取引終了後に各取引所はデータをCFTCに提出、集計したデータを金曜日の取引終了後(日本時間土曜日の午前5時30分頃)にCFTCはホームページ上で公表している。ヘッジファンドなど投機筋のポジションの変化をとらえることで相場の方向性を知る手段として市場で注目されている。