コーセー(4922)株に底入れの兆しが出ている。新型コロナウイルスでインバウンド(訪日外国人)需要は大きな打撃を受けたが、化粧品のトレンド変化を敏感にとらえた商品を積極的に打ち出している。ピンチはチャンスに変わりうる。株価もこれからの回復度合いを織り込む段階に入っているようだ。
■需要に変化
コーセー株は新型コロナの感染者数が世界的に再び増加したことなどから6月中旬以降、下落した。ただ、今週に入って1万2000円近辺で底堅さも見られるようになってきた。市場では「インバウンド需要の減少は織り込み済みで、最悪期は過ぎた」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジスト)という指摘が出ている。
「マスク生活」が始まってからはや半年程度。最近は口紅を塗る機会がめっきり減ったという人も少なくないのではないか。「一口に化粧品といっても需要に変化が起きている」(ニッセイ基礎研の井出氏)。
最近のメイクや肌ケアはどういうトレンドか。コーセーの経営企画部に話を聞いた。
メイクについては「いままでよりもアイメイクにポイントを置く人が増えている印象で、マスクとなじみのいいヌーディー系のピンクやベージュのアイカラーを提案している」。「マスクでメイクが崩れるのを防止したいというニーズは非常に高く、メイクキープミストなど落ちないメイクアイテムを愛用する人が増えている」という。
肌ケアでは「家にいる時間を活用したパックやマッサージなどスペシャルケア、マスクで肌荒れを気にする人も多いようで保湿ケアやアクネケアが人気」だ。皮膚薬大手のマルホ(大阪市)との共同出資会社が9月に発売する肌ケア商品「カルテヒルドイド」はマスク着用による乾燥悩みにも応えられる商品として訴求していく構えだ。
■中国、ネット通販で日本の化粧品購入
5月下旬から順次営業を再開した東京・銀座の百貨店の化粧品フロアでは楽しそうに化粧品を選ぶ人たちの姿が目立つ。インバウンドはまだ回復が見通せないものの、中国国内での化粧品需要は目を引くものがある。
きのう発表された中国の6月の小売売上高で化粧品関連は前年同月比20%を超える増加と、全体がマイナス1.8%だったのに対して驚異的な伸びを示した。中国では経済開放や海外旅行の拡大に伴って化粧文化が大きく発展してきた。そのなかで「コーセーや資生堂(4911)など日本メーカーは絶大な人気がある」と浜銀総合研究所の白鳳翔主任研究員は明言する。「いまは旅行できない代わりに、インフルエンサーが化粧品を紹介する動画配信で流行をチェックし、ネット通販も活用して日本の化粧品を購入する人が多い」という。
コーセーは海外展開を積極的に進めており、前期はアジアの売上高が前の期と比べて25%増となった。中国では「コスメデコルテ」など高価格帯の商品に対する関心も高い。日本国内でも人気が高い「雪肌精」は9月、ブランドとして初の全面リニューアルを控える。
〔日経QUICKニュース(NQN)尾崎也弥〕
<金融用語>
インバウンド需要(消費)とは
海外から来日した外国人観光客による日本国内での消費活動のこと。 訪日外国人旅行を意味する観光用語の「インバウンド(Inbound)」に由来する。