新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で金融市場は混乱を極めた。未曾有の危機に直面した金融のプロ達は、この危機とどう向き合ったのか。個人投資家向けに資産運用の助言をする独立系金融アドバイザー(IFA)大手ファイナンシャルスタンダード(東京・千代田)の福田猛社長に聞いた。
■口座開設数、3月に過去最高
――コロナショックで感じたことを教えてください。
「今回のようなショックが起こると、割高な資産が売られるということが改めてわかりました。コロナ禍の直前まで買われていた国内外の不動産投資信託(REIT)が大きく値下がりしたように、ネガティブな要素が増えてくると一気に売られてしまいます。価格が下がったときにうまく安値で買えた人でも、次にどのタイミングで売ればいいかが難しい。やはり個人投資家がタイミングをとらえて短期で資産を増やそうとするのは、そう簡単なことではないと感じました」
――顧客の投資スタイルに変化はありましたか。
「2月ごろまでわりと冷静でしたが、3月の相場急落でにわかに動き始めた印象です。絶好の買い場とみて投資を始めたり増やしたりしたお客様が多くなり、3月は弊社の口座開設数と資金流入額がともに過去最高になりました。投資スタイルでは、債券よりも株式を買うなどリスク資産の比重を増やす動きがありました。ファンドラップをご利用のお客様も、今回の相場変動に伴うリバランス(資産の再配分)効果がのちのち効いてくるので、投資の王道である分散投資の良さを体感してもらえそうです」
■「地方在住・現役世代」の顧客増加
――顧客対応をリモートにしたことで変化はありましたか。
「導入当初は環境を整えるのに少しバタバタしましたが、従来のお客様とは信頼関係ができているので、対面と変わりなく対応できています。ただ、新規のお客様とはお互い初対面なので、実際に会って話すよりやや距離感を感じますね。カメラ越しだとちょっとした表情の変化がわかりづらく、資産内容などを詳しく聞くのに難しさがあります」
「一方、リモートで面談できるようにしたことで、これまで東京のオフィスに足を運びにくかった地方のお客様や、近郊でも30~50代の現役世代からの相談が増えました。テレワークの隙間時間を利用するなどして、家に居ながら気軽に相談してもらえるケースが増えています。リモートでの業務が当たり前になってくると、社員の働き方の選択肢や自由度が広がります。働きやすい環境を整えることは、優秀なIFAを確保するためにも重要になってくると思います」
■長期の資産運用をサポート
――アフターコロナでIFAの役割は。
「長期の資産運用を支えるのが我々の使命ですが、今回のように相場が荒れる局面でこそお客様の力になれると思っています。普段から資産運用に関する教科書的な理論を丁寧に説明し、お客様も納得して長期の資産運用に取り組まれているはずですが、実際の相場急落に直面するとプチパニックに陥ってしまう人もいます。投資を中断すべきではないと頭の中でわかっていても、不安になってしまうのは仕方がないかもしれません」
「今はお客様が『体験学習』をする時期なのかなと思います。積み立て投資は値下がりしても買い続けることが大事なのですが、実際に下がるとやめてしまいたい誘惑に駆られがちです。それを乗り越えて成功体験を積めば、次のショックが来ても慌てず対応できるでしょう。勉強すること、体験することでリスク許容度は広がり、運用を続けることで資産を増やせる確率が高まります。それを手助けするのが我々の役割なので、お客様が安心して長期投資に取り組めるようこれからもサポートしていきたいと思います」
(QUICK資産運用研究所=竹川睦)