代替肉の米ビヨンド・ミートがコロナ禍でも高い成長力を証明した。8月4日の通常取引終了後に発表した2020年4~6月期決算は米国内外での小売り向け販売が急増し、前年同期比69%増収を確保した。ただ、株価は年初から9割近く上昇していたこともあり、決算発表を受けた時間外取引では売りが優勢になっている。
■売上高は市場予想を大幅に上回る
4~6月期の売上高は1億1333万ドル(約120億円)と、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(9900万ドル)を大幅に上回った。新型コロナウイルスの流行で自宅で料理する人が増え、小売り向けが2.9倍と成長をけん引した。一方でコロナの影響でファーストフードなど外食向けは6割減収となった。
環境意識の高まりなどから植物由来の代替肉の需要は強く、ビヨンド・ミートは外食向けから小売り向けに軸足を移している。6月下旬には全米で1個1.6ドルと従来の半値近くに下げた代替肉バーガーのお徳用パックを発売し、コロナによる供給網(サプライチェーン)の混乱で値上がりする牛肉に対し、競争力を高める戦略に打って出た。「店舗で販売されたのは4~6月期の最後の2週間だけだが、小売り向けの出荷を押し上げた」(イーサン・ブラウン最高経営責任者)という。
■代替肉の市場規模は莫大
中国を筆頭に海外進出も加速している。4月にスターバックスの中国店舗で販売を始めたのに加え、6月には中国の食品卸企業、7月からは中国のネット通販大手アリババ集団とも代替肉バーガーの販売で提携した。中国での生産拠点の立ち上げも目指しており、同国での成長余地は大きい。
世界の食肉市場の規模は1.5兆ドル前後とされ、5%が代替肉に切り替わるだけでも750億ドルだ。乳製品では植物由来の代替製品のシェアは13%に達し、将来的な代替肉の市場は大きく広がっている。
もっとも、成長期待を映して株価は年初から88%上昇しており、市場では割高感が意識されている。当面の高成長を織り込んだ株価水準との見方もあり、アナリストの投資判断は「売り」や「中立」が多い。4日の時間外取引では通常取引の終値を8%以上、下回った。
4~6月期は外食向けから小売り向けに商品を再包装した際のコストなどがかさみ、赤字幅が拡大した点も嫌気された。逆風下での増収は評価されるが、市場の期待値を超えるほどではなかったようだ。株価押し上げには採算改善とともに、中国での販売拡大などさらなる好材料が必要になりそうだ。(NQNニューヨーク 横内理恵)
<金融用語>
サプライチェーンとは
原材料の調達、生産から製造、物流、販売などを通して製品やサービスが消費者の手元に届くまでの一連のつながり。サプライヤー、メーカー、流通業者、小売業者、消費者などで形成される。ネットワークを通して組織が異なるサプライチェーン全体を一元化することで、業務効率を高める経営戦略のことをサプライチェーン・マネジメントという。