楽天(4755)が8月11日にオンラインで開催した2020年1~6月期連結決算の説明会では「成長」「楽天モバイル」「RCP(Rakuten Communications Platform=仮想化された事業者向け移動通信プラットフォーム)」などが焦点になった。説明会の内容をテキストマイニングして分析した。
1~6月期は売上高にあたる売上収益が前年同期比16%増の6787億円、最終損益が274億円の赤字(前年同期は1002億円の黒字)だった。この期間の最終赤字は11年1~6月期以来9年ぶりだ。4月に参入した携帯電話事業「楽天モバイル」や電子商取引(EC)の物流投資が重荷となった。
三木谷浩史会長兼社長は、説明会でそれぞれの事業について「成長」という言葉を繰り返し強調した。
国内の楽天市場など旅行事業を除いたEC事業の流通総額は前年同期比48%増と大きく成長した。三木谷会長はショッピングで3980円以上を購入すれば送料無料とする施策や自社物流網の展開などの効果が出ていると述べた。
銀行や証券、クレジットカードなどのフィンテック事業は大きく成長した。クレジットカード「楽天カード」の会員数は2000万人を超え、09年に買収した楽天銀行の口座数は900万超で、買収時より2倍以上となった。楽天証券は1~6月の新規口座数の開設数が証券業界でトップとなった。
費用負担の先行する楽天モバイルについては、4月のサービス開始から3カ月で100万回線の申し込みがあり、順調なスタートであると強調した。基地局の増設も前倒しで取り組んでいるという。大手キャリアがサービスを開始している5G(次世代通信規格)は、今秋のサービス開始に向けて日本電気(6701、NEC)と組み、開発を進めている。
楽天モバイルの今後の展開としてRCP戦略についても言及した。楽天が通信事業者に対して、仮想化された通信ネットワークを提供する。楽天モバイルは今年5月に米国のネットワーク運用システムなどを手掛ける米イノアイの買収を発表しており、RCPの海外展開に向けて準備を進めている。開発の道のりは長いものの、三木谷会長はRCPについて「モバイル事業者はおよそ3割のコストを削減できる。市場規模としては年間30兆円から40兆円が見込まれる。従来のネットワークの概念を根底から覆すものを開発している」と期待を込めた。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)