環境や社会、企業統治を判断材料とするESG投資が、不動産投資信託(REIT)にも及んでいる。日興アセットマネジメントはESGの評価を考慮したREIT指数に値動きが連動する上場投信(ETF)を組成し、9月に上場させる計画だ。こうした枠組みのETFは初めてとなる。株式ではESG投資が急速に広がり、債券でも社会貢献債といわれるソーシャルボンドの発行が増加する。次はREITにもESGマネーが流れ込むか注目される。
■建物のデザインや環境性能なども
9月3日に設定するのは「上場インデックスファンド日経 ESG リート(愛称:上場 ESG リート)」で、7日に上場を予定している。連動対象となるのは「日経ESG-REIT指数」で、オランダの運営組織、GRESBによるスコアを使ってREITを評価する。評価項目はエネルギーや水の使用量、温室効果ガス排出量などの指標、従業員や居住者といった利害関係者(ステークホルダー)への働きかけなどだ。一般的なESGの評価手法と大きくは変わらないが、建物のデザインや環境性能など不動産を運用するREITならではの項目もある。
指数の組み入れ比率はESG評価と時価総額を掛け合わせて決定する。流動性の低い銘柄を除き、東証に上場する全REITが対象で、ESG評価が低いからといって除外する「ネガティブ・スクリーニング」はしない。これまでの値動きをみると全体の値動きを表す東証REIT指数とほぼ同じだった。
日興アセットは「ESG投資が世界的に広まるなかで不動産分野への投資でも重視される可能性がある。ESGの要素を加えながらREITに投資する商品のニーズは高くなる」(広報)と話す。信託報酬は年率0.165%(税込み)に抑えており、東証REIT指数に連動する他のETFに比べて低い。コストを重視する傾向が強いインデックス(指数連動)投資家を呼び込めれば、新たな層にESG投資が広まるきっかけになる。(QUICK Money World 小松めぐみ)
<金融用語>
ESG投資とは
SRI(社会的責任投資)とCSR(企業の社会的責任)を発展的に統合した考え方。頭文字はE(環境、Environment)、S(社会、Social)、G(企業統治・ガバナンス、Governance)をそれぞれ意味する。世界が貧富の格差問題、ボーダーレス化する地球環境問題や企業経営のグローバル化に伴う様々な課題に直面する中で、企業への投資は、短期的ではなく長期的な収益向上の観点とともに、持続可能となるような国際社会づくりに貢献するESGの視点を重視して行うのが望ましいとの見解を国連が提唱した。その結果、ESGの視点で投資を行う金融機関が欧米を中心に広がっている。