平日の仕事の時間、CNBCをつけっぱなしにしている。ニューヨーク証券取引所の取引を中心に報じる経済専門のケーブルチャンネル。米国の取引が終わった後、アジア太平洋地区の市況を報じるブルームバーグテレビに切り替える。
ニューヨーク証取の幅広い業種と銘柄で構成されるS&P500種株価指数が先週、最高値を更新した。21日は3397.16で取引を終えた。週間ベースの上昇率は0.7%。テクノロジー株の比率が大きいナスダック総合株価指数は前週比2.65%高の11311.80で引けた。いずれも過去最高値を更新した。
主要株価指数が過去最高値を更新した今年2月。アップルの時価総額が1兆ドルを突破した2018年8月。ダウが2万ドルを初めて超えた2017年1月。過去の節目では、ウォール街だけではなく、米国全体がお祭り騒ぎだった。今回は違う。CNBCに連日、ウォール街のストラテジストやファンドマネジャーらが出演するが、かつての興奮が感じられない。
米バロンズ紙は22日、アップル1社がS&P500を最高値に押し上げたと伝えた。アップルの1週間の上昇率は8.2%、時価総額は2兆ドルを突破した。S&P500の上昇幅の60%はアップル1社によるものだとしている。
CNBCによると、S&P500が高値をつけた2月19日から最高値を更新した8月18日までの間にS&P500銘柄の38%が上昇した。言い換えれば過半数にあたる62%は2月19日の水準を下回ったままだ。買いが一部に集中し、大半の銘柄が安いまま放置されている。
「テクノロジー・マーケット」。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、いまの米国株式市場をこう呼んだ。時価総額が2兆ドルを超えたアップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグルを傘下に持つアルファベット、フェイスブックの5社がS&P500全体の時価総額の25%を占めている、としている。これほどの偏りは1970年以来のことで、当時の時価総額上位5位はIBM、AT&T、ゼネラル・モーターズ(GM)、エクソン、コダックだった。アップルをはじめとした5社にネットフリックスとエヌビディアを加えた7社が、歴史的な低金利を背景に積極的に買われている。
少数銘柄に大きく依存したマーケットは危険だとウォール・ストリート・ジャーナル紙は解説した。国債利回りの上昇に主要テクノロジー株が敏感になっているとしている。知人の証券ブローカーは、米10年物国債の利回りは0.75%が節目だと話す。0.75%を上回ると警戒感が広がる可能性があるとしている。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が27日、ジャクソンホール会議で演説する。政策の微調整をめぐる発言があれば利回りが動く可能性があるとみられている。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信