著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが子会社を通じて日本の5大商社株を取得したことが8月31日に伝わった。総合商社は化石燃料も扱うイメージがあるが、ESG(環境・社会・企業統治)の評価はどうなのか。独ESG評価会社アラベスクS-RayのESGスコアを調べてみた。
■ESGスコアは5社とも50点台、4社が卸売業平均を上回る
バフェット氏が投資したのは、伊藤忠商事(8001)、丸紅(8002)、三井物産(8031)、住友商事(8053)、三菱商事(8058)の5社。すべて日経平均株価の構成銘柄である。8月31日時点のESGスコア(100点満点)を見ると、5社で最も高いのが住友商の57.08点で、最も低いのは丸紅の51.81点だった。
アラベスクS-Rayは70カ国・地域以上の7000社を超える企業について、公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを自動収集し、人工知能(AI)による独自の手法でESGスコアを毎日更新している。ESGスコアはE(環境)、S(社会)、G(企業統治)の3つのサブスコアから構成され、ESG課題の株価への影響を考慮して、業種ごとに重きを置く評価項目のウエートを変えている。QUICKではアラベスクS-RayのESGスコアを金融情報端末を通じて提供している。
5社が属する「卸売業」全体のESGスコアをみると、平均は52.00点。丸紅を除く4社が卸売業平均を上回った。卸売業平均のサブスコアは「環境」が53.71点、「社会」は54.70点、「企業統治」は48.72点だった。
■「環境ESGサブスコア」は5社すべて70点台と高評価
5大商社のサブスコアをみると、「環境」は5社すべて70点台と高得点で、業種平均を優に超えており、環境課題に適切な対応をしていることがうかがわれる。とりわけ、製品やサービスの環境への影響と持続可能な消費への貢献を評価する「環境ソリューション」という項目はそろって高得点をマークしている。資源を扱うからといって環境の評価が必ずしも低いとは限らないわけだ。「社会」も5社ともに60点台で、業種平均を大きく上回っている。
一方、5社そろって業種平均を下回っているのが「企業統治」のサブスコアで、各社のESGスコアを50点台にとどめる原因になっている。商社は総じて巨額の資金を投資して利益成長を図っていく事業モデルなので、財務レバレッジの高さなど「資本構成」の項目がマイナス評価されているようだ。ビジネスに関する重要な情報の開示など「透明性」の項目は業種平均を上回るが、「資本構成」が足を引っ張っている。
アラベスクS-Rayによる5大商社のESG評価をまとめると、「環境」が特に優れ、「社会」も優れている一方、「企業統治」が弱点となり、全体のスコアは業種平均並みから少し上の水準にとどまっていると言えよう。ESGスコアをサブスコアやサブスコアの構成項目に分解してみると、意外な発見がある。(QUICKリサーチ本部 遠藤大義)