8月のバルチック・ドライ指数BDIは前月比▲7.2%の1516。船型別インデックスを見ると、ケープサイズ(BCI)が2335(前月比▲22.8%)、パナマックス(BPI)は1626(同+17.9%)、ハンディマックス(BSI)は915(同+8.4%)、ハンディサイズ(BHSI)は510(同+14.1%)。下位3船型が揃って3カ月続伸したものの、ケープサイズが3カ月ぶりに反落したことで、総合指標BDIも3カ月ぶりに反落した。
■鋼材在庫が目減り
鉄鉱石トレード最大の仕向地である中国では、新型コロナウイルス感染拡大や洪水の影響で鉄鋼部門の需要・供給が強い下押し圧力を受けたが、政府の景気刺激策が足元の鋼材需要を下支えし、鉄鋼生産も最高潮となっている。中国国家統計局によると、1~7月の固定資産投資額は前年同期比▲1.6%減と1~6月の同▲3.1%減から落ち込み幅が縮小。そのうち、民間部門の投資額が同▲5.7%減少したのに対して、国営部門は同+3.8%増加しており、両部門が回復基調を示す中でも国営部門の伸びが顕著で、中国政府が経済を下支えする姿勢が鮮明となっている。中でも、1~7月の鉄道事業への投資額は同+5.7%増、道路事業も同+2.4%増と高い伸びを示し、鋼材やセメントなど建築資材の需要回復を支えている。
鋼材需要の回復を背景に鉄鋼ミルは生産を加速、7月の中国粗鋼生産量は前年同月比+9.1%増の9,336万トンと、5月の過去最高記録を再び更新した。1~7月の粗鋼生産量は5億9,317万トンと前年同期比+2.8%増加し、今年の累計粗鋼生産量が10億トンを超えるハイペースとなっている。また、中国鋼鉄工業協会(CISA)加盟企業の8月上旬(1-10日)の粗鋼生産は215万トン/日と、前年同期比+5.1%増加し、足元でも活発な生産が続いている。
ところが、足元の鉄鋼生産が高水準で推移しているにも関わらず、Mysteelによると、6月下旬から1カ月以上にわたって続いていた市中鋼材在庫量の増加傾向が8月に入って一服している。主要5品目の鋼材在庫量は8月28日時点で1,894万トンと7月末時点の1,915万トンから僅かながらも目減りしており、中国鋼材需要の旺盛さが窺える。上海市場の鉄筋価格は1月中旬~7月末まで前年同時期の価格を一度も上回ることがなかったが、8月に入ってからは前年水準を上回って推移している。
また、7月の鉄鉱石輸入量は1億1,265万トンと過去最高を記録した。ただ、堅調な鉄鋼生産を背景に原料需要も拡大していることで、需給バランスは引き締まった状態が続いており、中国向け鉄鉱石指標価格(TSI62%)はこの3カ月余りは強い上昇トレンドを示し、28日時点で123.25ドル/トンと前年同期を5割近く上回る高値圏で推移している。
■石炭、生産国内需要減の影響
一方、石炭について見ると、中国税関総署によると、同月は石炭輸入量も前年同月比▲20.6%減の2,610万トンと大きく前年を下回った。また、国家統計局によると、7月の原炭生産量は3億1,794万トンと前年同月比▲3.7%減少し、国内外からの石炭供給が縮小した。ところが、7月の発電量は6,801億kW時と前年同月比+1.9%増加したものの、電力ソース別で最も比率が高い火力発電は4,600億kW時と同▲0.7%減少し、火力以外の電源ソースが発電量全体の伸びを支えた格好となっている。冬場の電力需要期に備えて電力会社が石炭調達を活発化させるタイミングで、中国向け石炭の海上荷動きが増えるとの期待もあるが、現地では年末まで当局の石炭輸入に対する抑制的な方針が維持されるとの見方が強い。
中国向け石炭荷動きの鈍化には同国の輸入需要が縮小している影響もあるが、供給国であるインドネシアにおける国内需要の落ち込みが石炭輸出の下押しにも繋がっている。一般的に、鉱物や穀物などの生産国で国内需要が落ち込んだ場合、輸出が促進されるケースが多いが、インドネシアの石炭会社には生産量の25%を国内向けに販売する義務がある。そのため、新型コロナウイルスの影響で自国の石炭消費が衰えている足元の状況において、同規制を遵守するためには輸出を抑える必要があり、石炭会社の中には減産を計画するケースも複数出ている模様。インドネシア銀行によると、Q1(1~3月)の石炭輸出量は前年同期比▲1.0%減の1億1,518万トンだったが、Q2は同▲17.8%減の9,308万トンと2017年Q3以来となる1億トン割れを喫している。
■中国による米国農産品の購入拡大
最後に穀物について見ると、中国政府が3月に米国農産品に対する制裁関税を免除して以降、中国バイヤーは大豆だけでなく、トウモロコシ・小麦などの購入も急拡大させてきた。中国による米国農産品の購入拡大は2月15日に発効した米中第一段階合意に沿った動きで、8月24日に開かれた閣僚級電話会談では第1段階合意が進展しているとの認識が双方から示された。両国は根本的な重要課題を抱えながらも、穀物トレードについては拡大基調を辿っている。
中国は2021年までに米国製品の輸入額を2017年実績比で2,000億ドル増やすとしている。今年は767億ドル、来年は1,233億ドルと1年毎に目標値が設定されているが、年末までで今年の目標へ到達することは困難な状況。ただ、米国から中国に向かう海上荷動きは明らかな増加傾向を示しており、今後の米中関係の行方は不透明ではあるものの、足元のドライバルク市場では米国農産品輸送を担う中小型船の需要拡大に繋がっている。(トランプデータサービス 海老原良・代表取締役)
<金融用語>
バルチック・ドライ指数とは
正式名称は「The Baltic Dry Index=通称BDI」で、英国のバルチック海運取引所が算出・公表する指数。世界各国の海運会社やブローカーから、鉄鉱石・石炭・穀物などの乾貨物(ドライカーゴ)を運搬する外航不定期船の運賃を収集し、一日1回算出している。1985年1月4日を1000として算定、国際的な海上運賃の指標となっている。株式市場でも、海運会社、特に不定期船を主力とする会社との株価連動性が高いとされる。