【日経QUICKニュース(NQN)宮尾克弥】9月4日の東京株式市場で東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)、レーザーテック(6920)、アドバンテスト(6857)など半導体関連株が軒並み下落した。米国の主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が前日に5.7%安と急落したのを受けて、売りが優勢になった。半導体関連株は一時的な下げにとどまるのか、市場関係者に聞いた。
■「長期の強気見通し捨てる必要ない」
藤原直樹・しんきんアセットマネジメント投信運用本部長
半導体関連を中心に米国のハイテク株は成長期待と過剰流動性を背景に資金が集中しすぎていた。米国で3連休が近いことからいったん利益を確定しようという動きが加速した。ここまでの急上昇を考えると割高感は残るため日柄調整は続きそうで、日本の半導体関連株もしばらく上値の重い展開になりそうだ。
とはいえ、長期で半導体関連株に対する強気の見方を捨てる必要はない。新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの浸透はデータ需要を急増させ、結果として時代を10年先取りする動きとなった。次世代通信規格「5G」やデータセンター向けの半導体需要は持続するだろう。
日本の半導体関連株は2020年4~6月期決算がやや期待外れで、いったん持ち高を調整しようとの動きが投資家に強まった。しかし、ここまで長期的な成長を見込める業種はないとみている。過熱感が解消すれば押し目買いの好機と捉える投資家は多く、下落は限定的だ。
■「今後の業績を先取りし過ぎていた」
石野雅彦・東海東京調査センターシニアアナリスト
春先以降の半導体関連株はデータセンター向けとスマホ向けの期待感が株価を押し上げた。特に米アップルが2022年に回路線幅3ナノ(ナノは10億分の1)メートルのCPU(中央演算処理装置)を搭載した「iPhone」を発売する期待から、設備投資の増大を見越していた点が大きい。
ただ、5ナノの「iPhone」登場すらこれからで、売れ行きが鈍ければさらに高性能な3ナノ搭載品の発売を遅らせる可能性がある。台湾積体電路製造(TSMC)の設備投資を見ると5ナノ向けは一服し、3ナノ向けはまだ先。足元の日本の半導体関連株が弱いのは華為技術(ファーウエイ)問題なども含め、今後の設備投資動向に不透明な部分があるからだ。
これまでのSOXの上昇は明らかに今後の業績を先取りし過ぎていた。利益確定売りが3日の急落につながったのは間違いない。上昇基調に戻るには、新型「iPhone」の販売や設備投資の動向に確信を得てからだろう。
■主要証券会社の投資判断一覧
<東エレク>
証券会社 | 投資判断 |
モルガン・スタンレーMUFG証券 | オーバーウエート |
JPモルガン証券 | オーバーウエート |
マッコーリーキャピタル証券 | アウトパフォーム |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | オーバーウエート |
みずほ証券 | 買い |
ゴールドマン・サックス証券 | 買い推奨 |
東海東京調査センター | ニュートラル |
クレディ・スイス証券 | アンダーパフォーム |
SMBC日興証券 | 1 |
UBS証券 | Buy |
野村証券 | Buy |
大和証券 | 2 |
<レーザーテク>
証券会社 | 投資判断 |
みずほ証券 | 中立 |
クレディ・スイス証券 | ニュートラル |
マッコーリーキャピタル証券 | アウトパフォーム |
ゴールドマン・サックス証券 | 買い推奨 |
野村証券 | Buy |
出所:QUICK
<金融用語>
押し目買いとは
相場が上昇トレンドにあるときに、利益確定売りなどで一時的に相場が下がる調整局面をねらって、買いを入れること。逆張りの投資手法の1つ。