安倍晋三首相が辞任を表明してから、世論調査での内閣支持率が急激に持ち直している。自民党の支持率上昇につながれば、次期首相による早期の解散総選挙も意識される。市場では経験則から「解散総選挙前後は株高・円安になりやすい」との指摘がある。過去の相場を振り返ると日本の株式相場は上昇傾向が目立っており、仮に総選挙となれば「リスクオン」の流れから円が売られやすい展開もありそうだ。
■解散総選挙と円安のつながり
このところ報道各社の世論調査で内閣支持率の上昇が目立つ。日本経済新聞社が8月29~30日に実施した世論調査では内閣支持率は55%で7月の前回調査から12ポイント上昇した。メディアによっては内閣支持率が6割超となったものもある。それにつれて自民党の支持率も上昇しており、市場では次期首相による早期の衆院解散を予想する声が出てきている。
早期の衆院解散となった場合、金融・資本市場への影響はどうなるのか。野村証券の後藤祐二朗氏は「株高や円安の動きとなりやすい」と分析する。後藤氏らの集計によると、2005年からの5回の解散総選挙で、解散1営業日前から選挙5営業日後の東証株価指数(TOPIX)は5回とも上昇した。為替相場に関しても1990年からの10回の総選挙でドルやポンドなどの主要通貨に対して、平均すると円安基調となっている。
解散総選挙と円安のつながりについて、株価との連動から説明するものが多い。総選挙となれば海外投資家からの視線が日本に集まり、出遅れている日本株を見直すきっかけとなる。野村の後藤氏は、最近は為替相場と株価との連動性は薄れているとしつつも「投資家のリスク許容度が高まれば、やはり円が売られやすい地合いとなるだろう」とみる。
「アベノミクス」の継続を掲げる菅義偉官房長官が14日投開票の総裁選で勝利した上で、解散総選挙でも勝ち、国民の信任を得られた場合は円安になるとの指摘もあった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏は菅氏が国民の信任を得れば、日銀による金融緩和を中心としたアベノミクスの「リスタート」に踏み込みやすくなり、投資家間で安倍首相が就任した当初のような円安進行が想起されやすいとの見方を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)山田周吾〕
<金融用語>
リスク許容度とは
投資額が許容できるリスクの度合いを指す。 投資をおこなう際は、リターン(収益率)を求めれば求めるほど、元金が増減する確率が高まる。高いリスク許容度であれば期待リターンを高めることができる。 投資家は、その資金性格に照らしあわせて、どの程度までのリスクを容認できるのかを熟慮し、商品(=投資対象)を選ぶことが重要とされている。