ノルウェー最大の資産運用会社ストアブランド・アセットマネジメントは、低炭素経済への移行を促すために「強化」した新たな気候変動対策方針に基づき、総額4,700万ドルに相当する27銘柄の持ち株を売却したことを明らかにした。
米石油メジャーのエクソンモービルとシェブロンは、気候変動施策を妨害するロビー活動を行っているとの理由から売却対象となった。英・オーストラリア系鉱業大手のリオ・ティント、米ガス事業のSouthern Company、ドイツ総合化学BASFもロビー活動を理由に売却された。
売却対象となった上記5社は、いずれも気候変動に関する投資家イニシアチブClimate Action 100+ (CA100+)のエンゲージメント対象企業だ。CA100+(運用総額計40兆ドル)は企業にパリ協定への準拠を働きかけており、企業のロビー活動を注視する動きを強めている。
6月にはシェブロンの株主総会で気候変動関連のロビー活動に関する株主議案が提出され、ブラックロックを含む株主の過半数(53%)が賛成した。これは、今年最も多くの支持を得た議案の1つである。
CA100+のメンバーでもあるストアブランドAMは、これら5社の気候変動対策に対しより厳格な対応を取った。新たな気候変動対策方針において、パリ協定または気候関連規制全般に反するロビー活動を行う企業を投資対象から除外すると示した。
ストアブランド・アセットマネジメントのヤン・エイリーク・ソージェスタッド(Jan Erik Saugestad)CEOは、「気候変動は人類が直面している重大リスクの1つだ。この危機を克服するための取り組みを弱体化させるロビー活動は決して容認できない」と述べた。
更に同社は、「石炭またはオイルサンド関連事業の売上高が全体の5%超を占める」企業も投資対象から除外する方針である。この基準により、三井物産、関西電力、中部電力といった日本企業を含む22社が除外対象となった。同社はこれら企業について「脱石炭に向けた歩みが遅すぎる」と評している。
ストアブランドは新たな方針を発表するにあたり、「金融業界が一丸となって」より強固な気候変動対策をとるよう促した。
ソージェスタッドCEOは、「世界的に化石燃料産業からの投資撤退が進むなか、我々の競合相手も新たに同様の方針を打ち出すことを期待する」と述べている。
さらに、「低炭素社会への移行を加速するため、投資家は責任ある行動を積極的にとる必要がある。我々は、気候変動が生態系、社会および経済に危害を引き起こす事態に手をこまねく傍観者ではない」としている。
同氏は、BP、シェル、エクイノールといった欧州の石油メジャーの対応は米石油メジャーに比べれば評価できるとしつつも、それに「安住」すべきではないと警告している。
同氏は脱石油・ガスの動きを「加速させる」必要性を訴える一方、「カーボンオフセットや炭素回収・貯蔵によって注意をそらすべきではない」と強調した。
ストアブランドAMは新たな気候変動戦略で「ポートフォリオレベルでの気候変動リスクの分析」を発展させる方針も示しており、その進捗状況を毎年報告するとしている。
ストアブランドは今月初め、KLPおよびRainforest Foundation Norwayと共同で森林破壊リスクの管理に関するレポートを発表した。同社の新たな戦略には、「低炭素化を進め、気候変動にレジリエント(強じん)な企業への資本流入を促す」という目標に加え、森林破壊をめぐる懸念も反映されている。
先月にはアマゾン熱帯雨林の破壊をめぐるブラジル政府の投資家エンゲージメントで画期的かつ有益な進展があり、ストアブランドはその中で重要な役割を果たした。
ダイベストメントされた日本企業は、三井物産、石油資源開発(JAPEX)、出光興産、関西電力、中部電力の5社。
※本稿は、レスポンシブル・インベスター(Responsible Investor)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。同社は、ロンドンに拠点を置く、世界の機関投資家に向けた責任投資、ESG、サステナブル・ファイナンスを専門的に取り扱うニュースメディアです。
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