日本株の投資戦略で「バリュー株優位」との見方がストラテジストなどから相次いでいる。株式相場は転換点に差し掛かっているのか。関心が次第に高まってきた。
■バリュー比率の引き上げを推奨=みずほ証
みずほ証券は9月11日付リポートで、「今週の日本株市場に大きな影響を与えるのは自民党総裁選の行方ではなく、ナスダック市場の調整が続くかだろう」との見方を示した。実質マイナス金利の継続や人々の行動様式の変化によって、テクノロジー株物色が続くとの見方を紹介した一方で、「持続的成長を織り込んでもバリュエーションは高すぎる」と指摘。米国ではロビンフッダー、日本でも個人投資家のテクノロジー株投資の成功体験があることから押し目買い意欲は強く、すぐに急落しないものの「上値は重くなろう」との見方を示した。また、「我々はグロース:バリューの投資割合7:3を勧めてきたが、足もとはバリュー比率の引き上げを勧めたい」とのビューも示されている。
■日本株がレンジを上抜ける可能性も=JPモルガン
JPモルガン証券は11日付リポートで、「過去数週間、日経平均株価は2万3000円前後の水準での推移となっている一方、物色面ではそれまでの高クオリティ・グロースへの一極集中からバリュー・リバーサル優位へと転換しつつある」と指摘。
今後について、「(1)世界的な景気回復を受けて、日本の業績予想リビジョンがプラスに転換し、上値余地が広がる可能性が出てきた、(2)内外政治リスク顕在化によって、株式市場が動揺する可能性が後退した、(3)近い将来に“アフター・コロナ”の経済環境を市場が織り込みに行く可能性が高まっている」点から、日本株がレンジを上抜けする可能性が高まってきたとの見方を示した。
また、「市場が先々の正常化を見込む過程ではバリュエーションが機能しない“空中戦”の様相を呈することは、例えば今年3月中旬~5月上旬の相場上昇のようにしばしば起こりうるし、主要中央銀行が大規模金融緩和を実施している局面では尚更」であるとも指摘。加えて、上記相場シナリオとを照らし合わせると、「バリュー・リバーサル優位の相場環境はしばらく続く公算が大きい」との見方も示した。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
<金融用語>
バリュエーションとは
企業の利益・資産などの企業価値評価のこと。 本来の企業価値と現在の株価を比較して、株価が相対的に割安か割高かを判断する具体的な指標としては、株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)、配当利回りなどがある。