【QUICK Market Eyes 片平正二】欧州での新型コロナの感染再拡大に加え、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が9月20日に世界的な大手金融機関がマネーロンダリングに利用されていたと公表したことで、日本の4連休中に世界同時株安の様相が強まった。リベラル派で人気があったルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事の死去に伴う後任人事を巡り、トランプ政権と議会民主党の関係悪化も警戒される中、追加のコロナ対策法案に対する期待感もしぼむ状況だ。不透明な米政治への関心が依然として市場内では高い。
■財政出動は保留?
ゴールドマン・サックスは18日付のリポートで「年内の追加の財政出動の可能性は低いとみられる」と指摘した。リポートでは今週、状況が多少明確になるだろうとしながら、「議会は選挙前の最後の重要法案、会計年度末である9月30日を超えての歳出権限の延長に動き始めるだろう。この法案に財政刺激策が含まれなければ、あるいは今週に合意が発表されなければ、年内は財政出動は保留となる可能性が高い」と指摘。
その上で「現在の当社予測は失業給付上乗せの一部延長や給与保護プログラム(PPP)による融資の拡大などを含む、1兆ドル規模の財政刺激策を前提としている」としつつ、「ねじれ議会となった場合も追加の財政出動が多少は実施される可能性があるが、その規模は恐らく遥かに小さくなるだろう」とし、民主党が大統領選・上下両院選で勝利を収めれば2兆2000億ドル規模の大規模なものになるとみていた。FRBの金融緩和頼みの相場展開が続きそうだ。
■米大統領選による日本株式市場への影響
連休明けで日本株は様子見ムードの強い展開が見込まれ、21日にCME日経先物(円建て)が付けた2万2460円を付けるような事態は避けられそう。市場からは「寄ったらそれっきりでしょう」(市場筋)と、営業日が少なく、週末にかけて台風12号が関東に接近するせいか、一段と仕掛けるような展開にはなりづらいとの見方が出ていた。
11月3日までの米大統領選挙まで2カ月を切り、今月29日に候補者によるテレビ討論会が予定されている状況下、ゴールドマン・サックス証券は18日付のリポートで大統領選による日本株式市場への影響を分析した。その中では、トランプ大統領が再選を果たした場合や共和党が上院を支配して統一政府を阻止した場合は、大きな政策変更が行われる可能性が下がり、現状が維持される事から不確実性が後退するとした。
ただ、「一方でバイデン氏が大統領選に勝利し、民主党が上下院を制した場合は、政策の不確実性は高まる。もし、民主党による統一政府が実現した場合には、法人税率が引き上げられる可能性が高く、当社米国株式ストラテジストはその場合、S&P500の2021年1株当たり利益(EPS)が170→156ドルに下がると予想している」と指摘。
その上で「 過去の大統領選前後のTOPIXの株価パフォーマンスを振り返ると、リターンの分布が広く強い傾向とは言えないものの、不透明感の高まりなどを反映して大統領選前数週間で弱含む傾向が見られる。今回の大統領選では、コロナによる影響で大統領選の最終的な結果が判明するまでに例年以上の時間がかかる可能性があり、不透明感と日本株式市場への逆風も例年よりも長引く可能性がある」とし、不安定な値動きが続く恐れがあるとみていた。
「米国を中心とするアメリカ大陸への日本企業(東証1部、金融除く)の売上高比率は約12%と高く、政策変更がなされた場合には税率引き上げによるマイナス影響、インフラ支出などによるプラス影響など、収益に影響を受ける企業も多いと考えられる」とし、ヘルスケアなどで影響を受ける企業が出てくるとも指摘した。
<金融用語>
EPSとは
Earnings Per Shareの略称で和訳は1株当たり利益。一株に対して最終的な当期利益(当期純利益)がいくらあるかを表す。 当期利益を発行株式数で割ったもの。