今回は、8月1日(土)に開催された会場を使用しないライブ配信型オークション「SBI Art Auction Live Stream」をレポートする。ライブ配信型オークションは、従来のオンラインのみのオークションとは異なり、実際にオークショニアがオークションを執り行う中、動画配信を見ながら、PCやスマホの画面越しにオンラインもしくは電話でオークション参加ができるというもので、Withコロナ時代にスタートした新しい形式のオークションである。
■手堅い人気銘柄
出来高は、全体落札総額1億9015万2500円(落札手数料含む・以下同)、全体落札率は94.1%と好記録を達成し、非常に活況なセールとなった。
最高額での落札となったのは、ロッカクアヤコの大型作品Lot.081《無題》(アクリル・キャンヴァス/140×100cm)。落札予想価格700~1000万円のところ、1782万5千円で落札された。ロッカクアヤコは2点の出品があったが、もう一方の作品Lot.082《無題》(アクリル・段ボール/80×54.6cm)は落札予想価格150~250万円のところ、391万円で落札されている。いずれも筆などを使わず、手で少女を描きあげたロッカクアヤコの特徴的な作品である。近年のオークションでは常に安定した結果を残しており、手堅い人気銘柄となっている。
■アパレルブランドとコラボも
次にMr. Doodleのオリジナル作品Lot.087《Hot Summer》(アクリル・キャンヴァス/縦横100cm)が続く。落札予想価格100~150万円のところ、落札予想価格上限を大きく上回る575万円で落札された。イギリス出身のMr. Doodleは、最近のオークション市場で高騰を見せている作家である。作家名の「Doodle」は、落書きのことを意味している。太めのペン1本で落書きをするように仕上げられた作品は、POPでわかりやすく楽しむことができ、鑑賞する者を魅了する。近年アパレルブランドとコラボレーションした製品展開などもあり、その注目度の高さも相場上昇の一因と考えられる。
Mr. Doodleの版画作品(Lot.034~037)とオリジナル作品(Lot.085~087)は、WEBのアクセス数が最も多く、電話もほぼ全て埋まっていたという。その状況を反映し、出品作品7点全てが落札予想価格上限を大幅に上回る価格で落札された。今後の値動きに期待が高まる。
■国内外で高い人気
今回は、土屋仁応(つちや よしまさ,1977-)に焦点を当てレポートする。
土屋仁応は、伝統的な仏像彫刻の技法を用いて、主に動物をモチーフとした作品を現代風に制作する木彫作家である。木彫とは思えない滑らかな質感と乳白ベースの独特な色彩と、目に内側から水晶をはめ込む玉眼という仏像彫刻の技法で仕上げられた、繊細かつ神秘的な作品を多く発表している。
国内外でも人気は高く、今回のセールでアクセス数が多かった作家の一人にもなっている。
本セールでは2点の木彫作品の出品があった。1点は高さ22㎝の猫の作品Lot.066《青猫》(檜に彩色、水晶)で、落札予想価格50~80万円のところ、212万7500円で落札された。続くLot.067《未来人》(樟に彩色、水晶)は、高さ28.5㎝の人型の作品で落札予想価格35~55万円のところ、92万円で落札されている。いずれも落札予想価格上限を超えた落札となった。
土屋の木彫作品の価格の推移を、2015~2019年のオークションデータを抽出したACFパフォーマンス指標で分析する。2017年に出品時の評価が下がっているが、これは出品されていた作品のサイズが他の出品作品に比べて小さかったことが影響していると考えられる。逆に2018年に評価が大きく上がっているが、これは他の出品作品に比べて大きいサイズの出品があったことと、2017年の好調なセール結果を加味したことによるものと推察される。
落札予想価格平均に上下動がみられるものの、落札価格平均は下落することなく、2015年から2019年にかけて右肩上がりで推移している。時価指数も同様の右肩上がりで好調だ。この上昇傾向がどこまで続くのか、今後も、動向を注視していきたい。
SBIアートオークションでは、次回10月に開催するセールも、ライブ配信型で行うことを予定している。
時代に即した新たな入札環境の定着化、コロナ禍における消費行動の変化などが、国内におけるアート市場のより一層の活性化につながることを期待する。
(月1回配信します)
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※次回のSBIアートオークション開催予定は10月3日