巨大なインド市場を巡る欧米や中東マネーの「出資競争」が熱を帯びている。中心にいるのが傘下に通信や小売りの有力企業を抱え、時価総額ベースでインド最大の上場企業となっている財閥、リライアンス・インダストリーズだ。通信子会社には7月にかけ、米フェイスブックやグーグルが相次いで投資を決めた。今度は小売子会社に米プライベートエクイティ(PE)投資会社のKKRなどが次々と大金を投じようとしている。
■巨大インド市場への期待
今回の出資競争の舞台はリライアンスの小売子会社であるリライアンス・リテール・ベンチャーズ。米投資ファンドのシルバーレイクが9月9日、750億ルピー(約1000億円)を出資すると発表したのを皮切りに、他の米国や中東のファンド勢による出資観測の報道が続いた。
さらに米ブルームバーグ通信が10日、米アマゾン・ドット・コムが大規模な出資を検討していると報じると親会社のリライアンス・インダストリーズの株価は急伸。16日までに過去最高値を更新した。その後は欧米株安などのあおりを受けて失速したが、23日に米KKRがリライアンス・リテールに555億ルピーを出資すると伝わると再びリライアンス・インダストリーズ株への買いは活気づいた。
リライアンス・インダストリーズ株の時価総額は現在、15兆ルピー(約21兆円)規模まで拡大した。人口13億人の巨大なインド市場の潜在成長力への楽観論が、リライアンスへの関心の高さに直結している。
■「1兆ルピー近くを調達する」
インドでは小規模事業者が多くデジタル化などが遅れている小売業界の成長期待が根強い。出資競争の最初の舞台となった通信子会社ジオ・プラットフォームズには、電子商取引(EC)サービス「ジオマート」がインドのEC市場で覇権を握るとの思惑がある。リライアンスは8月に大型買収を通じて国内最大の実店舗網を一段と強化しており、ジオとリライアンス・リテールとの相乗効果にも楽観論が広がっている。
市場では「(ジオに出資した)既存投資家らと協議が進み、ジオの時と同様、今後数週間で続々と出資案件が固まるだろう」(インドのIDBIキャピタル)との声が多い。IDBIは「リライアンスは最終的に20~25%ほどのリライアンス・リテール株を売却し、1兆ルピー近くを調達する」と予想する。
ジオに対しては米フェイスブックが57億ドル(約6000億円)を出資すると表明したのをきっかけに、KKRやシルバーレイクを含む米国や中東勢が相次いで参入。米グーグルも7月、インドに今後5~7年で約100億ドルを投資する方針を示し、その第1弾としてジオに45億ドルを出資した。リライアンスはジオに対する出資として1兆5000億ルピーを集めた。リライアンス・リテールに向かう資金は果たしていくらになるだろうか。(NQNシンガポール 村田菜々子)