日銀の9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、自動車の業況判断指数(DI)はマイナス61と、前回6月調査より11ポイント改善したものの、大企業製造業の業種別で最も低い水準だった。欧米で強化される環境規制への対応を迫られる中、自動車各社のESG(環境・社会・企業統治)評価はどうなのか。独ESG評価会社アラベスクS-Rayによる9月末時点のESGスコアを調べてみた。
■国内自動車のESGスコア首位はスズキ
9月末時点でアラベスクS-RayがESGスコアを算出している世界の自動車業種に分類される会社は52社ある。このうち日本企業10社のESGスコアをランキングすると、首位はスズキ(7269)の63.53点だった。2位はいすゞ自動車(7202)の60.69点、3位はヤマハ発動機(7272)の59.06点と続く。時価総額トップのトヨタ自動車(7203)は55.06点で6位だが、世界の自動車52社平均の54.05点を上回っている。
アラベスクS-Rayは70カ国・地域以上の7000社を超す企業の公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを自動収集し、人工知能(AI)による独自の手法でESGスコア(100点満点)を毎日更新している。ESGスコアはE、S、Gの3つのサブスコアから構成され、ESG課題の株価へのインパクトを考慮して、業種ごとに評価項目のウエートを変えているのが特徴だ。
■環境ESGサブスコアの首位はいすゞ
それでは国内自動車各社の「環境ESGサブスコア」はどうか。首位はいすゞで、唯一80点台と高く、マツダ(7261)を除く他の8社も70点台と世界の自動車業種の平均を上回っている。サブスコアを構成する評価項目をみると、製品やサービスの環境への影響と持続可能な消費への貢献、つまりクリーン技術などを評価する「環境ソリューション」の項目で、大半の会社が高い評点を受けている。事業活動が生物多様性や動物福祉に与える影響といった環境保護などを評価対象にする「環境スチュワードシップ」や、エネルギーや土地・材料を含む資源の使用が効率的かどうかをみる「リソースの使用」も総じて好成績だ。
新型コロナウイルス禍で悪化した景況感に底打ち感がうかがえるが、業況判断DIの水準はなお低い。欧州連合(EU)による自動車の二酸化炭素(CO2)排出規制や米カリフォルニア州の自動車環境規制などもあり、業界を取り巻く事業環境は厳しい。自動車各社の環境課題への対応はアラベスクS-Rayで見ると一定の評価を受けており、今後も規制などに適応して事業構造を変革していけるかどうかが問われていると言えそうだ。(QUICKリサーチ本部 遠藤大義)