NTT(9432)が10月2日にオンラインで開催したアナリスト説明会「NTT IRDAY 2020」では「ネットワーク」、光技術を使ったネットワーク構想の「IOWN(Innovative Optical & Wireless Network、アイオン)」「ドコモ」に関心が集まっていた。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
説明会では技術、グローバル、ガバナンス(企業統治)の3つのテーマごとに担当役員がプレゼンテーションした。
技術戦略のセッションでは、技術全体を統括する渋谷直樹副社長がNTTの中期的な成長に向けた方向性を説明した。新型コロナウイルスまん延後のリモートワールド(分散型社会)を考慮した新サービスの展開・提供というテーマでは「オープンになっていく世界。これを早く実現していきたい」とネットワークのオープン化を例に挙げた。既存の専用ハードウエアやソフトウエアを汎用へと移行し、複数のインフラを使う「マルチベンダー」化を進めることで「オペレーションを柔軟化したり、サービスを高度化したりできる世界」の早期実現を目指すと力を込めた。
具体策として挙げたのが6月25日に発表したNEC(6701)との644億円の資本提携だ。ソフトや生産技術に強みをもつNECと、NTTのLSI(大規模集積回路)技術などの強みをいかし「トータルで導入支援から保守・運用までサポートしていく」ビジネスを進める考えだ。
世界規模での研究開発の促進という観点からは、かねて提唱している光ネットワーク構想のIOWNへの期待感を示した。IOWN構想ではデータを光信号の状態で伝送・交換処理し、2030年までに既存の約100倍のデータ伝送容量を持つ通信網を実用化させる。NTTドコモ(9437)の完全子会社化により「IOWNそのものであるInnovative Optical & Wireless Network、このパーツがすべてそろう」と指摘した。
プレゼン後には澤田純社長がQ&Aセッションに臨んだ。残る上場子会社のNTTデータ(9613)について「売却したほうがいい」とのアナリストの意見に対し、澤田社長は「売却することを自分の中で検討したことがあるかというと、あります」と前置きしたうえで「将来のシナジーを生むために保持したい」との考え方を示した。
シナジーの具体例として挙げたのがトヨタ自動車(7203)が20年1月に計画を発表したスマート都市の実証プロジェクト「ウーブン・シティ」だ。自動運転車のプラットフォームをNTTの持ち株会社の研究所とNTTデータが共に進めている。自動車へのシステム実装に必要になる5G(次世代通信規格)にはNTTドコモの技術、管理にはNTTコミュニケーションズの力が必要で、グループの総合力で成長していく方針を強調した。(QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎)