【QUICK Market Eyes 大野 弘貴、片平 正二】現職の大統領であり候補者でもあるトランプ氏が新型コロナウイルスに感染するなど混迷の度を深める米大統領選。民主党候補・バイデン氏が優勢との見方のみならず、上下両院も民主党が多数を占める「トリプル・ブルー」の現実味が市場の話題になっている。このシナリオで日本株が受ける影響は・・・。
■トリプル・ブルーならTOPIXは1700、S&P500は3100=モルガン・スタンレー
モルガン・スタンレーは9日付のリポートで、11月3日の米大統領選挙、上下両院の投票日から2021年1月の大統領就任式に向けての投資戦略を示した。直接的な手法として米30年債のショートポジション、原油への警戒、ポンドドル相場の強気ポジション(ポンド買いドル売り)がマクロでは魅力的としつつ、バイデン前副大統領が大統領に選出された場合、ドル安と原油価格の低下が、トランプ大統領が再選されればその逆が起きるだろうと見込んだ。
市場ではバイデン氏が大統領に就任し、上下院も民主党がとった場合(トリプル・ブルーorブルーウエーブ)に株高が進むとの見方が出ている。リポートでは「潜在的な政策転換は市場の選挙問題の結果に結びついていますが、継続的な回復が主要な傾向を設定し、政策はその傾向をめぐる二次的な変動の推進力と見なすと考えている」とし、足元の景気回復基調が続くことを重視していた。
日本株に関してはトリプル・ブルーならTOPIXが1700としつつ、現在のトランプ大統領・上院共和・下院民主なら1550と弱気に見込んだ。トリプル・ブルーなら米国のインフラ投資の増加、米長期金利の上昇、対ドルでの新興国通貨の上昇などが予想されるが、円高が好材料を緩和するとみていた。
大統領、上下両院の与野党の組み合わせによるS&P500やTOPIXの予想値は下記の通り。
シナリオ | S&P500 | TOPIX |
バイデン大統領・上院民主・下院民主 | 3100 | 1700 |
バイデン大統領・上院共和・下院民主 | 3375 | 1500 |
トランプ大統領・上院共和・下院民主 | 3450 | 1550 |
トランプ大統領・上院共和・下院共和 | 3600 | 1600 |
■日経平均は年初来高値更新の可能性も、2万5000円超えのハードルは高い=野村証
野村証券も同日付のリポートで、日経平均株価が8日にコロナショック後の戻り高値を更新した要因について、「米大統領選でのバイデン候補リードの含意」であると指摘。バイデン氏が掲げる法人税率引き上げや各種規制強化は株価ネガティブとみていたものの、「市場は民主党が完全勝利(トリプルブルー)なら(1)拡張的財政の実現、(2)トランプ大統領が敗北を認めない政治混乱リスクが低下――という2つの強気材料をより重視し始めた」との見方を示した。
野村証はこの展開が続くことで、日経平均株価は年初来高値(2万4116円)を超える可能性があるとした。
一方、2万5000円を突破するハードルは高いとも指摘。「8日時点でTOPIX来期予想ベースPER(株価収益率)は16.24倍と、11年以降の月末値ベース最高値(15年4月:16倍)を上回っている」ため、2万5000円突破には来期EPSが5.7%上方修正される必要があると推計。1日に発表した日銀短観(9月調査)では、企業が今季下期の業績見通しを未だに引き下げているなど、「7~9月期決算発表後のコンセンサス予想PERは、“今期引き下げ、来期据え置き”の展開がメーンシナリオであり、目先の業績上方修正余地は限られる」との見方を示した。