【QUICK Market Eyes 弓ちあき】2月期決算企業の発表が一巡し、月後半からは12月期や3月期決算企業の7~9月期決算の発表が始まる。新型コロナウイルス感染症の悪影響は一巡し、回復フェーズに市場の目線は向いている。日本株の上昇をけん引する傾向があり、市場の注目度が高いのがハイテク株の代表でもある電子部品大手の動向だ。
■自動車関連企業の落ち込み
東証1部上場でアナリストのカバレッジが10社以上の電子部品大手の4~6月期決算を見ると、13社中7社が減益かもしくは営業赤字、6社が増益かもしくは営業黒字と収益動向には差が開いていた(図1)。
例えばアルプスアルパイン(6770)は65億円の営業赤字(前年同期は58億円の黒字)に落ち込んだ。車載用モジュールやカーナビなど、自動車関連の製品比重が高く、新型コロナの感染拡大の影響で自動車生産の落ち込みを受けやすかったことが背景にある。自動車の窓開閉用のモーターや電装部品を手掛けるマブチモーター(6592)も4~6月期の減益率は9割近くと落ち込みが目立った。
■自動車関連企業の回復
一方、注目したいのが7~9月期の利益水準の回復度合いだ。アナリスト予想の平均値であるQUICKコンセンサスの7~9月期の営業利益水準が4~6月期の実績を上回るのは9社で、下回るのが4社と回復を見込む向きが多い(図2)。
目立つのが自動車関連で落ち込んでいた企業の回復だ。マブチは7~9月期のQCでは5倍強の利益水準が予想されているほか、アルプスアルも黒字転換の予想となっている。車載関連への投資を積極化してきた日本電産(6594)も自動車向けの回復が上乗せとなり、水準が切り上がる想定となっている。TDK(6762)はスマートフォン向け蓄電池の好調に車載向け受動部品の回復感が上乗せされるほか、京セラ(6971)も車載カメラなどで回復を織り込んでいると見られる。
■6社が高値更新
株価の動きを見ると、10月に入って年初来高値や上場来高値を付けているのはイビデン(4062)、日電産、ルネサスエレクトロニクス(6723)、ヒロセ電機(6806)、太陽誘電(6976)、村田製作所(6981)。村田製などは次世代通信規格「5G」関連でのMLCC(積層セラミックコンデンサー)の需要増への期待、米アップルの新型スマートフォンなどを手掛かりに資金流入が足元で加速した。会社予想とQUICKコンセンサスの20年度営業利益予想を比較すると、QCの上回る率が大きい銘柄群でもある(図3)。
自動車関連は利益の上振れ期待があっても、株価でまだ上値余地を残す銘柄もある。7~9月期決算では、こうした銘柄の水準訂正が進む展開に期待したい。新型コロナからの回復とのシナリオについては織り込みが進んでいることを踏まえれば、21年度に向けた成長シナリオがあるかにも注目だ。例えばヒロセ電。足元の業績は底堅く、株価も年初来高値圏にある。無借金経営で盤石の財務基盤がありながらも、ROE(自己資本利益率)は5%台だ。経営環境の平常化が進む中では資本効率の向上も課題になるだろう。
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。