今回は9月10日(木)に開催されたマレットジャパンのオークションについてレポートする。マレットジャパンは、ジャンルにとらわれることなく、国内作家の高額作品および、国際市場性のある海外作家の高額作品を重点的に取り扱う、国内の主要なオークションハウスのひとつである。
■落札総額1億2,497万円
本セールでは、国内外作家118名(国内:65名、海外:53名)209作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額1億2,497万円(落札手数料含まず、以下同)、落札率は77.5%だった。
ロッカク アヤコ(1982年~)のキャンバス作品LOT145(180.0×140.6㎝)が、落札予想価格1,200~1,700万円のところ、2,000万円で落札された。今回のオークションでは最高額での落札となり、安定した人気である。
また前回のレポートでもコメントしたミスター・ドゥードゥル(1994年~)のキャンバス作品が2点出品され、LOT142「A Piece of ‘Rainbow Doodle’」(30.0×30.0㎝)は落札予想価格40~60万円のところ255万円、もう一点のLOT143「Doodling」(15.0×15.0㎝)が落札予想価格10~15万円のところ60万で落札された。ミスター・ドゥードゥルはイギリス出身のアーティストで2019年東京アートフェアに登場し、ハローキティとコラボレーションした作品は即完売、市場で話題の作家である。
■陶芸家 桑田卓郎
今回は現代アートのマーケットでも高く評価されている陶芸家 桑田卓郎(くわた たくろう・1981年~)についてレポートする。
本セールでは、「ろくろ」を用いず制作した大ぶりの楽茶椀1点が出品された。LOT167「金彩垸」(高9.0cm 径12.1cm)で、落札予想価格10~15万円のところ、26万円で落札された。
桑田卓郎は1981年広島に生まれ2002年より陶芸家・財満進に師事、現在は岐阜県土岐市に工房を構えて活動している。古来の技法に独創性とポップな色彩表現を加え、伝統的な技術と美しさを蘇らせる作品を数多く制作しており、釉薬が粒状や縮れ状になる技法をデフォルメしつつわかりやすく伝える作風を特徴としている。
同作家の陶芸作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標注*を見てみると、2017年にオークション市場に登場して以来、ほとんどの作品が落札予想価格上限より高く落札されている現在活躍中であり、未だオークション市場での出品作品数はさほど多くない。手にとりやすい「ぐい呑み」などの小品に比べ、大振りの「茶碗」は制作に時間を要し、作家本来の持ち味が楽しめるため、人気度を測る上で参考になる。高額な大型作品が出品された時に、落札平均や中央値が大幅に左右されてしまうことがあるが(2020年はぐい吞みなどの低価格の小ぶりな作品の出品が多い)、今後も価格上昇が見込める作家と考えられる。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、桑田卓郎の作品は2017年からオークション市場に登場している為、2017年~2020年のデータをグラフ化している。
(月1回配信します)
※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら
※次回のマレットオークション開催予定は11月19日