10月27日の米債券市場で米長期金利の指標となる10年物国債利回りが前日比0.04%低い(価格は高い)0.76%に低下した。このところ上昇が目立っていた長期金利の失速は、27日発表の景気指標が米国の消費者の慎重な姿勢を映したのが一因だ。米国で新型コロナウイルスの感染が再び広がり、景気回復が鈍化しかねないとの見方が長期金利を押し下げた。
■消費鈍化が金利低下圧力に
米調査会社コンファレンス・ボードが27日に発表した10月の米消費者信頼感指数は100.9と前月から0.4ポイント低下した。同社のリン・フランコ氏は発表資料で「新型コロナの感染者数が増えつつあり、失業率も依然高水準とあって、経済が年内に勢いを取り戻すとみる消費者は少ない」とコメントした。
指数の内訳をみると「短期の見通し」が98.4と4.5ポイント低下した。雇用情勢の改善を支えに「現在の景況」が104.6と5.7ポイント上昇したが、見通し悪化が響いた。指数はコロナ危機前の2月(132.6)の水準を大幅に下回ったままだ。金融市場では「感染が増えて営業の一時停止や失業が再び広がるとみられ、追加経済対策の早期実施がないことが景況感を悪化させる」(ハイ・フリクエンシー・エコノミクス)との見方が多い。
米国の1日あたりの新規感染者数は23日に過去最多を更新し、冬場は感染拡大が勢いを増すとの警戒感がくすぶる。「行動規制がなくても消費者は自ら外食や買い物を控え、今後数カ月の景気の重荷になりかねない」(オックスフォード・エコノミクスのジョン・キャナバン氏)との声もある。消費鈍化が金利に低下圧力をかけそうだ。
■「年末商戦で現金の余力はある」
ただ、投資家は悲観一辺倒でもない。パンテオン・マクロエコノミクスのイアン・シェパードソン氏は「貯蓄率が大幅に上昇しており、年末商戦で現金の余力はある」と指摘する。8月の貯蓄率は14.1%と1月(7.6%)のほぼ倍になっている。
例年10月上旬には年末商戦の売り上げ予想を明らかにする全米小売業協会(NRF)だが、今年はデータ不足を理由に現時点でまだ発表していない。一方で同協会が前週発表した年末商戦時の消費者の支出計画の調査によると、1人あたりの支出額は997ドルで、前年を約50ドル下回るもののギフトなどへの出費は5年平均は超える水準だった。消費者は旅行の代わりにギフトや飾りなどに出費するとみられ、調査通りならば底堅い消費になりそうだ。
年内の米景気が底堅さを保てば、来年以降は回復に向かうとみる市場関係者は多い。その場合は米金利は上昇しやすい。新型コロナワクチンの認可で経済活動が急速に持ち直すと予想するゴールドマン・サックスは21年末までに米長期金利が1.45%へ上昇すると読む。
新型コロナワクチンや治療薬は現時点で明確な普及時期は見通せない。新型コロナの感染拡大への警戒感が増すなかで来週に米大統領・議会選挙を迎える状況で、不確実性が多い環境では目先、金利上昇は勢いを欠くだろう。(NQNニューヨーク 戸部実華)