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国策の「脱炭素」、市場はゼロエミ・チャレンジ銘柄に注目

脱炭素社会の実現に向けたイノベーションに挑戦する「ゼロエミ・チャレンジ企業」の動向が注目を集め始めた。菅義偉首相が10月26日の所信表明演説で温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を表明し、再生可能エネルギー政策が本格的に動き出す。低価格志向が強いといわれる日本だが、環境に配慮した製品には多くの消費者がプレミアムを支払うとの結果も示されており、新たなビジネス機会が企業価値の上昇をもたらすといえる。

■「ゼロエミ・チャレンジ」とは

「革新的環境イノベーション戦略」に紐付く経済産業省の事業や、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している28のプロジェクトに取り組む企業を対象に、投資家などに活用可能な情報を提供するプロジェクトが「ゼロエミ・チャレンジ」だ。経済産業省が9日に発表したもので、上場企業は156社が指定を受けた。今後はゼロエミ・チャレンジ企業、投資家、政策立案者等の対話の場を設け、技術動向だけでなく経営戦略としてのイノベーションの動向について投資家の理解を深めることで、更に民間資金がイノベーションに呼び込まれるよう、環境整備を進めるとしている。以下は156社を1つのバスケット化したチャート。今のところ他のESG指数に比べるとパフォーマンスは見劣りする。

※「ゼロエミ・チャレンジ」上場企業156社をバスケットして指数化
※「ゼロエミ・チャレンジ」上場企業156社をバスケットして指数化。
期間は2019年10月26日からの一年間。

■GHG排出量削減は企業価値上昇につながる

菅義偉首相は26日の所信表明演説で温暖化ガス(GHG)の排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を表明した。具体策として梶山弘志経済産業相は同日の記者会見で水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力を挙げ、大容量蓄電池の量産支援などを念頭に実行計画を年末めどにまとめると言及した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、今後の注目点として、次期エネルギー基本計画の策定作業を挙げ、ゼロエミ ッション電源比率の 2030 年度目標の引き上げ可能性が高いと指摘した。

GHG排出量削減は企業価値の上昇につながる。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による排出気候変動に伴うリスクと(ビジネス)機会シナリオ分析では、運用する株式については、政策面での制約が大きい1.5℃シナリオが最も株式価値にプラスの影響を与えた。半面、2℃や3℃と制約が緩くなるにつれ、株式価値に与える影響はマイナスに転じていた。分析に使用したのは金融サービス会社MSCIが提供する気候バリューアットリスク(CVaR)という手法で、気候変動によって企業価値が将来手的にどの程度変化するかを分析し、企業価値に与える金銭的ショックとして捉えることができる。

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日本企業に関していえば、世界が2℃目標などに代表される温室効果ガス(GHG)排出削減に取り組んだ場合、国内株式ポートフォリオの資産価値が11.2%上昇すると見込まれる。一般に企業にとってはGHG排出量削減を進めるとコストがかさむと考えられるが、企業が保有する環境技術に係る機会も含めて影響を分析すると環境技術活用による企業価値の押し上げが、GHG排出削減コストを上回ることが示された。その主要因とみられるのが、日本企業の低炭素技術特許だ。国別で見た特許スコアでは日本が最も高く、内訳では自動車やエネルギー供給、電気自動車の割合が大きかった。政策リスクなどの高まりによる環境関連技術などへのニーズの高まりが収益機会につながる企業が多いとされる。

地球環境に配慮した商品や企業を支持する「エシカル消費」も後押しする。UBS証券による調査では、日本の消費者が環境や社会性に配慮した消費への意識が高いことが明らかになった。「環境に配慮した商品」や「社会的責任を果たしている店舗・企業」に対して多くの消費者が価格プレミアム(平均でプラス8%)を支払うとの結果が示された。低価格志向の根強い日本において環境に対する付加価値が評価されており、GHG削減が企業に成長の機会をもたらすといえそうだ。QUICK Market Eyes  川口究)

著者名

QUICK Market Eyes 川口 究


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