【日経QUICKニュース(NQN)寺沢維洋】29日の東京株式市場でソニー(6758)が大幅続伸している。一時、前日比579円(7.0%)高の8827円まで上昇し、8月17日以来およそ2カ月半ぶりの高値をつけた。同社は28日、2021年3月期の連結純利益(米国基準)が前期比37%増の8000億円になる見通しと発表した。担当アナリストの最新リポートから、市場の見方をまとめた。
■「ゲームや電機事業の計画はまだ保守的」
UBS証券・安井健二氏、福山健司氏、Sean Park氏
4~9月期は華為技術(ファーウェイ)向け製品の在庫評価減175億円を計上しながらも好業績となった。UBSの予想を上回った。ゲームや半導体だけではなく、その他の全事業が強かった印象だ。
新たに発表された通期見通しでは、半導体のイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)事業の減額以外は全ての事業が増額された。ただ、増額後でもゲーム事業や電機のエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)事業などは計画が保守的だと我々は考える。
事業や経営に特に問題点は見当たらない。しかし、株価の問題点は、今期の好業績で、来年上期は増益が難しくなる点だ。今年はゲームでは巣ごもり需要、テレビは給付金の恩恵、映画については販促費用がかかっていない、などコロナ禍でのプラス要因が実は多い。
投資判断は「ニュートラル(中立)」を据え置き、目標株価は従来の8000円から8700円に引き上げた。
■「7~9月期の営業益3000億円達成、収益の底力感じる」
モルガン・スタンレーMUFG証券・小野雅弘氏、安元ゆい氏
コロナ禍で20年7~9月期の営業利益3000億円の達成は収益の底力を感じる内容で、ポジティブだ。ゲーム事業のほか、EP&S事業の高収益を評価したい。サプライチェーンがいまだ通常に戻らないなか、製品ミックスの改善などの戦略が奏功した。
一方、ネガティブな面はI&SS事業の見通しを、従来の1300億円から810億円に引き下げたこと。下期の利益は減損がない前提で58億円しかみていない。
(11月発売の)新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」のハードは粗利が逆ザヤになると想定されることから、10~12月期での販売好調が利益面に必ずしもポジティブとは言えない。会社側はPS5の今年度の販売台数について、PS4の初年度時の760万台以上を目指すとコメントしている。モルガン・スタンレーMUFG証券の予想は850万台。
決算を受け株価は短期的に上昇するだろう。一方、会社側の説明では、下期から収益性が大きく改善するコンビクション(確信)は得られなかった。来期の営業利益の目線が上昇する内容には至らなかったため、目標株価は8400円を継続する。