【NQNニューヨーク 張間正義】選挙結果は民主党が大統領選と上下両院で全勝する「ブルーウエーブ」が最有力とみられているが、それ以外では以下の4つのシナリオが考えられる。
(2)ねじれ――バイデン大統領誕生、上院は共和党、下院は民主党が過半数獲得
追加経済対策の規模が大幅に縮小され、バイデン氏が目指すインフラ投資が成立する可能性も低下する。過去の例では、共和党が野党になれば「財政緊縮を主張する傾向が強くなる」(米国野村証券の雨宮愛知氏)。政策実現よりも、自らの主張を通すことを優先するためだ。ブルーウエーブに比べ財政政策の支えが弱まり、21年以降の経済成長率は低いものにとどまる。金融市場では株安と長期金利の低下が起きそうだ。
民主党のオバマ政権時代の10年の中間選挙で共和党が下院で逆転勝利し、保守強硬派「ティー・パーティー(茶会)」が存在感を高めた。オバマ政権は共和党の抵抗で予算審議が難航し、政府閉鎖に追い込まれた。このシナリオではそうしたリスクも浮上する。
(3)現状維持――トランプ大統領再選、上院は共和党、下院は民主党が過半数獲得
プロ(親)ビジネスのトランプ政権が続くことになり、政策への安心感から株高となりやすいだろう。バイデン氏が提唱する増税のリスクがなくなる点も株式市場で好感されやすい。
トランプ氏は景気優先で財政拡張を容認し、共和党内の財政タカ派をけん制しつつ妥協点を探ることになる。夏以降に協議してきた追加経済対策の提案額は上院共和党が5000億ドル、トランプ政権が1.8兆ドルと差は大きいが、最終的には1兆ドル超になるとの見方が多い。バイデン氏ほど大規模ではないがトランプ氏も10年間で1兆ドルのインフラ投資を公約に掲げており、資本財など景気敏感株への買いを促す可能性がある。
(4)レッドウエーブ――トランプ大統領再選、上下両院とも共和党が過半数
2016年選挙の再現となる。追加経済対策は1兆ドル超となり、トランプ氏が掲げる中間層を対象にした追加減税やキャピタルゲイン課税の引き下げも現実味が増す。トランプ相場が再来し「長期金利が最も上昇しやすいシナリオ」(TDセキュリティーズ)だ。低所得者向けの医療保険制度(オバマケア)が廃止される可能性も高まる。
(5)政権孤立―トランプ大統領再選、上下両院とも民主党が過半数
孤立したトランプ政権は民主党との協議を進め、追加経済対策は2兆ドル規模になる可能性がある。ただ、トランプ氏が掲げる追加減税やインフラ投資は民主党によって阻まれる公算が大きい。官公庁の人事承認や予算審議などが停滞し、政権運営が混迷するリスクもある。
16年の大統領選では予測では6%程度しかなかったレッドウエーブが実現した。選挙前はトランプ氏が当選すれば「株安・金利低下・ドル安」になると懸念されたが、予想に反して実際は「株高・金利上昇・ドル高」に振れた。大統領選の結果に関係なく、早い段階で決着すれば不透明感が後退し、株式市場にプラスとみる市場関係者も多い。