米大統領選の接戦が伝わった11月4日、ニューヨーク外国為替市場で円の対ドル相場は1ドル=104円50銭前後と前日終値とほぼ同水準を維持した。選挙結果では米上下両院で主導政党が異なる「ねじれ」議会となりそうだ。一方、大統領選では民主党のバイデン前副大統領の勝利を見込む声が強い。アジア市場で進んだドル高は一服したが、米各州の開票結果を横目に方向感を欠く展開が続いた。
■ねじれ議会の様相濃く
激戦州のフロリダなどでのトランプ米大統領の「逆転勝利」が伝わったアジア市場で加速したドル高は、4日のニューヨーク市場の時間帯に入って減速した。ウィスコンシンなど中西部の激戦州でバイデン前副大統領の優勢が伝わり、最終情勢を見極めたいとのムードが広がったからだ。中西部の州での投票作業は当日投票分から郵便投票分へと移るため、郵便投票の比率が大きいとされる民主党が時間の経過とともに追い上げる可能性が高い。
米議会上院選では民主党優勢が見込まれていたノースカロライナやメーンなどを共和党候補が制しそうで、上下両院で主導政党が分かれるねじれ議会の様相が濃くなった。上院が共和党主導となれば、追加の経済対策の規模は民主党が提案していた2.2兆ドルから1兆ドル以下へ、財政出動も小規模になると想定される。スコシア・キャピタルのショーン・オズボーン氏は「米景気回復の勢いは想定を下回るとの見方から、低リスク通貨のドルを買う動きは続いた」と指摘する。
一方、TD証券のマゼン・イッサ氏は、民主党が掲げる法人増税や規制強化の観測が後退した、としたうえで「米議会が過度な民主党色に染まらずバランスの取れた状況になることは市場関係者に安心感を与えた」とみる。投資家心理を支えたことで米株式相場が上昇し、結果的にドル相場の上値を抑えたという見立てだ。
財政出動が小規模となれば「米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を一段と強化する可能性が高まり、ドルの上値を抑えそうだ」(スコシア・キャピタルのオズボーン氏)との見方も浮上した。
ねじれ議会による不透明感で短期的にはドルが上昇しても、「米国の貿易・財政の双子の赤字もあって来年以降はドル安基調が続く」(バノックバーン・グローバル・フォレックスのマーク・チャンドラー氏)との見方が根底にある。円の対ドル相場を巡っては「104円の節目を超えれば102円が視野に入り、来年後半は100円台まで上昇する」(TD証券のイッサ氏)との予想も聞かれる。
トランプ米大統領の陣営は4日、バイデン氏が制する見込みのウィスコンシン州に再集計を求め、開票作業を長く続けるペンシルベニア州を訴える構えだと伝わった。選挙結果が判明するまで波乱が予想されるが、長期的なドル安観測は根強いようだ。(NQNニューヨーク 古江敦子)