【NQNニューヨーク=川内資子、古江敦子、横内理恵、戸部実華、岩本貴子】米大統領選は4日も結果は確定せず、議会上院選も与野党が接戦となっている。同日の米株相場はハイテク株主導で大幅高となる一方、長期金利は低下した。大統領選の情勢に対する米主要金融機関や機関投資家の見方をまとめたところ、目先の相場変動の大きさを警戒する姿勢が目立った。
■ゴールドマン・サックスのエコノミスト、アレック・フィリップス氏
世論調査に反し、「ブルーウエーブ」の可能性は低くなった。郵便投票の開票を見極める必要はあるが、トランプ大統領が激戦州で想定以上に健闘している。上院選でも、民主党が多数派を占めるシナリオが描きにくい。民主党が上院で優位となれば経済対策の規模は2.5兆~3兆ドルになる一方、共和党の優位が維持されれば1兆ドル以下となると予想している。大統領選で誰が勝利するかに関わらず、財政支出の規模が来年の景気動向の鍵を握る。
■JPモルガンのクロスアセット・ファンダメンタル・ストラテジーのヘッド、ジョン・ノーマンド氏
現状では次期大統領は不明だが、新政権はねじれ議会によって予算でも規制でも変更に対しては議会の抵抗に直面することになりそうだ。半面、来年初めの大規模な財政出動を見込んだポジションに傾けていた市場関係者にとっては厄介だ。
■モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ゼザス氏
大統領選の結果判明には時間がかかりそうだが、投資家は大統領と議会の多数派が違うねじれ議会となることに焦点を合わせるべきだ。経済対策の規模は小さく、積極的ではなくなる。上院の共和党が強固に反対するため(増税など)税制改革も見込みにくいだろう。
■シティグループのチーフ・米国株ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏
4日朝時点ですべての結果がわかっているわけではないが「ブルーウエーブ」は実現しそうにない。10年物国債利回りの低下は大規模な経済対策への期待が後退したことが理由だ。一方、金融市場は上院の共和党と民主党の勢力が拮抗することで急進的な政策の推進が難しくなり、ほっとしている。投資家は景気敏感株よりも成長株の選好を強めている。
■バークレイズの株式ストラテジスト、マニーシュ・デシュパンデ氏
米大統領選は明確な勝者が決まっておらず、2000年のように長期間結果が分からない状態が続くシナリオの可能性が高まった。こうした環境では相場の振れが大きくなり、リスク回避の動きから緩やかな株安につながると予想する。投資家は株式相場の楽観ムードに慎重に向き合い、目先は変動が大きい相場展開に備え、既存のリスクヘッジ手法を維持すべきだ。
■UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、マーク・ハフェル氏
現時点では米大統領選の勝敗は予測がつかない。ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの各州の結果が勝者を決めることになりそうだ。上院選では共和党が過半数を維持する確率が高まっており、ねじれ議会となれば新型コロナウイルスのまん延で落ち込んだ米経済を支える大規模な経済対策の成立を難しくさせる。選挙結果が明確になるまでは相場の変動率が高まりやすくなるだろう。
ただ選挙結果にかかわらず、新型コロナ禍からの回復が今後の株式相場を動かす要因になると予想する。(規模を縮小した)追加経済対策の実現や、来年半ばまでにはコロナワクチンが出回るとの見方を背景に中期的な株式投資への環境は良好とみている。
■ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフ・インベストメント・ストラテジスト、マイケル・アローニ氏
共和党と民主党は(選挙結果について)相手の不正を訴えており、法廷闘争が泥仕合を加速させそうだ。選挙に関連する不確実性は残るが、選挙結果が固まればマイナスの実質金利や十分な金融・財政政策、経済活動や企業収益の持ち直し、新型コロナの封じ込めが、来年に向かって金融市場の支えになる。リスク資産は投資対象として魅力的だ。相場変動が大きくなって、リスク資産の価格が大きく下がれば割安に買うチャンスだ。