【QUICK Market Eyes 大野弘貴】16日の米市場でダウ工業株30種平均が大幅上昇し過去最高値を更新。節目の3万㌦をいよいよ視野に入れた。一方でハイテク株の動きはやや鈍さも目立ち始めた。背景には運用資産の配分を変更する動きがありそうだ。
■ロングオンリー勢のポジショニングがセクター・ローテーションを拡大へ=BofA
BofAセキュリティーズは17日付リポートで、世界的にみて、ロングオンリー・ファンドは長期的な金利上昇局面で恩恵を受ける可能性のあるセクターをアンダーウエートしていることから、今後のポジショニングがセクター・ローテーションを拡大させる可能性があると指摘。BofAの推計によると、これらのファンド数は5100に上り、運用資産額は20兆ドルに達するもよう。
足もとでは金融・エネルギー・素材が最もアンダーウエートになっていると指摘。その上で、素材は収益回復と米ドル安から、エネルギーはワクチンが旅行需要を喚起、金融は債券利回り上昇により、それぞれ恩恵を受ける可能性があるとの見方を示した。
また、BofAは10月に株式市場が下落する中、株式を運用するファンドは米国向けのエクスポージャーを197億ドル、欧州向けを194億ドルそれぞれ削減した一方、アジア太平洋地域のエクスポージャーを67億ドル、新興国市場は102億ドルそれぞれ拡大させたとの推計も示した。
■高リスク資産への更なるローテーション余地あり=ゴールドマン
ゴールドマン・サックスは16日付リポートで、同社が追跡しているすべての指標が月初から強気に転じ、リスク資産を保有する投資家が大幅に増加したことで、株式に対しては「ややオーバーウエートになった」と指摘した。
調査会社EPFRの週間統計によると、世界の株式ファンドへの資金流入が先週1週間で400億ドル超に達し、2000年以来最大のインフローとなったと同時に、短期金融市場や国債などの安全資産は資金流出だったとの統計を引用している。
また、夏場以降は中立を維持していたリスク・アペタイト指標も、足もとでは明らかにプラスに転じており、米個人投資家協会(AAII)のブルベア調査で強気比率が2018年1月以来の水準まで急上昇したことから、市場センチメントの改善が際立っている点も指摘されている。
これらの投資家ポジションの上昇について、「過去、大統領選前に弱くなり、選挙後に上昇する傾向がある」ことから、特段のサプライズではないと指摘。
ファイザーとモデルナによるワクチンの治験結果がダウンサイドリスクを大きく減らしたことでマクロ見通しが改善。投資家心理は最近の不確実性の解消と成長期待の改善に支えられたとの見方も示されている。
加えて、これらの動きはまだ初期段階にあると思われることから、「より高リスク資産への更なるローテーション余地がある」との見方も示された。
<金融用語>
セクター・ローテーションとは
セクター・ローテーションとは、景気の動向を把握した上で、景気の局面変化ごとに、有望な業種別銘柄群に投資対象を切り替えていく投資戦略のこと。 景気の波を、谷底に達した時を出発点にして、拡大期→成熟期→後退期→停滞期とすると、それぞれの局面で高い投資成果を達成する産業群には、一定のパターンが見られる。 実際の投資では、このパターンを認識した上で、産業内での企業間格差にも注目する必要がある。