【日経QUICKニュース(NQN) 大貫瞬治】財務省が18日発表した10月の貿易統計(速報、通関ベース)で、輸出額が前年同月比0.2%減となった。減少は23カ月連続で比較可能な1979年以降では、プラザ合意のあった85年9月から87年7月の最長記録に並んだ。新型コロナウイルスの感染拡大ショックで輸出の落ち込みが長引いた格好だが、市場関係者の間には先行き楽観論が広がる。
みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「前年比での減少が2年近く続いたのには2つ要因がある」と話す。1つ目が2018年10月前後の米中貿易戦争の激化。世界経済の下振れリスクが懸念され、需要の落ち込みや在庫の積み増しを懸念した企業が生産調整に入り、輸出が低迷したと指摘する。
2つ目は20年の春、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい経済活動が低迷したことだ。小林氏は「コロナウイルスの影響がなければ2~3月ごろには前年比でプラスに転じていた可能性もある」と振り返る。実際、足元の減少率は5月の28.3%から徐々に縮小し、前年並みの水準が近づいている。
■市場では先行き楽観論も
市場では小林氏のように輸出の先行きについて楽観的な見方が多い。バークレイズ証券の前田和馬氏は「中国ではコロナが収束して経済回復が進んでいる」として、堅調な中国向け輸出が全体を押し上げると説明する。欧州では再びロックダウン(都市封鎖)が相次いでいるが、みずほ証券の小林氏は「需要の落ち込み以上に現地の工場生産が落ち込むことになれば、(日本の)輸出にとっては増加要因にもなる」として、11月の輸出額は前年比でプラス圏も見込めると話す。
前回、23カ月連続輸出減の契機となったのが1985年9月のプラザ合意だ。貿易赤字に苦しんでいた米国のドル高是正を目的とした協調介入で円高・ドル安が急激に進行。85年初めに1ドル=250円超だった為替レートは、87年には1ドル=120円台にまで上昇し、日本の輸出は下押しされた。この間、85年末から87年はじめにかけて日本銀行は公定歩合(政策金利)を下げ続け、バブル経済につながったとされる。その後、日経平均株価は89年に3万8915円の史上最高値をつけた。
くしくも足元の日経平均株価は29年ぶりの高値水準にある。輸出減タイ記録の80年代後半との相似性はあるのか。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「日米金利の低下でドル円レートの変動は80~90年代より小さい」と指摘する。さらに現在は企業も海外進出を進めており「当時よりも為替変動が輸出企業に与える直接的な影響は限定的だ」という。中国経済のけん引による世界経済の上押しと、新型コロナからの反動期待が加わることが、落ち込んだ輸出の先行き楽観論を後押ししそうだ。