【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】11月19日の東京株式市場で、バンダイナムコホールディングス(7832)が逆行高となった。一時前日に比べ308円(3.5%)高の9155円まで買われ、上場来高値を更新。時価総額は2兆円の大台にのせた。新型コロナウイルスの感染再拡大とワクチン開発期待の間で市場心理が揺れ動くのを横目に、業績上振れ期待から上値を試している。
■上振れるケースが目立つ
「バンナムHDの会社予想を信じている人は誰もいませんよ」。ある国内証券のアナリストはこう話す。現時点での2021年3月期純利益予想は前期比43%減の330億円。4~9月期時点で進捗率は96%に達しているにもかかわらず、会社は予想を見直していない。
過去を振り返っても、バンナムHDの決算実績は直近の会社予想から上振れるケースが目立つ。20年3月期の純利益実績は576億円で、予想は540億円。19年3月期も実績が633億円で、予想が540億円だった。
■回復傾向は継続
今期は巣ごもり需要を取りこみ、ガンダムプラモデルなどのトイホビー事業が好調だ。「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」などのゲームも人気で、アナリスト予想平均であるQUICKコンセンサスの今期純利益は535億円(12日時点、14社)と、会社側と約200億円の乖離(かいり)がある。
コロナ感染防止のため、運営するゲームセンターの休業が余儀なくされた春先は上値が重かったバンナムHD株。リアルエンターテインメント事業について、会社は「9月の国内既存店売上高は前年同期比78.3%まで回復し、10月以降も回復傾向は継続している」(4~9月期決算のテレフォンカンファレンス)と説明する。
足元で、国内でコロナが感染再拡大しているが、全国的に不要不急の外出が制限されるような状況にない。今年はアニメ映画「鬼滅の刃」のヒットで「映画を見終わった後で、チケット半券サービスを実施するゲームセンターに足を運ぶ人もいるだろう」(エース経済研究所の安田秀樹シニアアナリスト)との声も聞かれる。
業績の上振れを予想し目標株価を1万円台におくアナリストも出始めた。保守的な会社見通しとは裏腹に、市場では強気論が浮上する。
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
QUICKコンセンサスとは、証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。