【QUICK Market Eyes 弓ちあき】11月末を基準日とした株主優待の権利付き最終売買日は11月26日だ。11月末を基準日とする企業は33社と少ない。優待利回りと配当利回りを合算したベースで首位となったのはネクスグループ(6634)だった。
■宿泊や旅行関連の優待が目立つ
子会社ウェブトラベルで旅行の見積もりを取ると、税別10万円以上の旅行費用が国内旅行で5000円、海外旅行で1万円割引になる優待を実施しており、利回りが高めになりやすい。また3位のアメイズ(6076)も30%オフとなる宿泊割引券を贈呈するなど、11月は宿泊や旅行に関連した優待を実施している企業が7社と目立つ印象だ。新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が再び強含みで推移する中で目先は旅行に出かけるタイミングも迷うところだが、優待の利用期限を延長している企業も多いため、長い目で見て投資の機会を探るのも手だろう。
中部ガスグループのサーラコーポレーション(2734)はホテルのほか、ガソリンスタンドや飲食店など優待券が使える場所は幅広い。また近くに店舗がない場合も優待券の金額に応じて優待カタログから好きな商品を選ぶことができる。
■株価上昇率では「配当利回り上位」が優位
11月に入り米大統領選も通過し、株式市場では投資指標面で割安なバリュー株への資金回帰の動きが見られている。利回りに着目した投資アイデアも有効になりやすくなってきていると言えそうだ。なお、11月の優待銘柄のうち、「優待利回り上位10社」と「配当利回り上位10社」の10月以降、16日までの値動きを指数化して比較すると、配当利回り上位が2ポイントあまり優位だった。
優待の場合は独自サービスを提供している企業の利回りが高くなりやすい傾向があるが、単純に利回りだけで判断する投資家は少ない。業績とも連動しやすく公平感のある配当の方が、バリュー株優位の相場環境の中で株価の判断材料としては機能しやすい面があるのだろう。
■優待の効果引き上げを狙った変更が目立つ
なお11月もすでに16日までで14社が優待の変更を発表した。廃止は5社、新設は7社だった。
変更内容をみると保有下限を引き上げている企業のほか、継続保有を条件に加えたり、保有区分に応じて内容に差をつけたりするなど、株主優待の効果引き上げを狙った変更が目立つ。新設企業でも対象を1単元ではなく複数単元以上とする企業が目立っている印象だ。
企業にとって株主数が多ければ多いほど、優待コストはかさみやすい。より多くの株式を安定的に保有してほしい企業の狙いが鮮明になっている。こうした変更の流れは今後も加速しそうだ。
<金融用語>
配当利回りとは
配当利回りとは、株価に対する年間配当金の割合を示す指標。 一株当たりの年間配当金を、現在の株価で割って求める。たとえば、現在株価が1,000円で、配当金が年10円であった場合、配当利回りは1%(10円÷1,000円)となる。なお、投資をするときは、年間配当金の予想値で計算し、判断材料とする。 株価が下落すると、配当利回りは上昇する。企業が剰余金の配当を減少させるリスクはあるものの、配当金は株価上昇の値上がり益よりも確実性が高いため、配当利回りを重視する投資家も存在する。 なお、市場全体での配当利回りを見る場合、単純平均で算出される配当利回りに上場株式数によるウエイトを付した加重平均利回りを用いるのが一般的である。算出に当たり、以前は「自社株を含めた発行済株式数」で計算していたが、「自社株を除く発行済株式数」で計算する方法が主流になりつつある。企業の株主還元策として自社株を買い消却する動きが拡大しており、より実態に近い投資指標にするための措置である。