コロナショックで世界の株式相場が大きく下げた3月から半年以上が経ち、運用環境は改善してきた。投資信託の運用がどれくらい回復したか、主に海外株式で運用するファンドについて調べてみた。
■9月末時点の「回復度」をランキング
対象は国内公募の追加型株式投資信託(ETF、DC・ラップ専用を除く)のうち、海外株式型のファンド(QUICK独自の分類)。9月末までの値動きを比較し、「回復度」の上位と下位をランキングした。
「回復度」の算出方法は、コロナショック前に付けた今年の最高値(A、分配金再投資ベース)を起点とし、そこからショックによって付けた最安値(B)までの下落幅を計測。9月末時点(C)でどれくらい持ち直したかを比較して順位をつけた。AからBへの下落幅を9月末までにまるまる取り戻した場合の回復度を「1」とし、数値がそれ以上ならショック後に今年の最高値を更新したことを示す。
■回復度1位は「グローバル・フィンテック」
回復度1位は日興アセットマネジメントが運用する「グローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり)」の2.234だった(図表参照)。世界の株式のうち、フィンテック関連企業に投資する。基準価額はショックで付けた最安値から111.8%上昇した。同シリーズの「為替ヘッジあり・年2回決算型」も3位にランクインした。ショック後の回復力は強い一方、ショック時の下落率は2本ともマイナス33.4%と大きかった。
4位の「三井住友・A株メインランド・チャイナ・オープン」は、コロナショックでの下落率がマイナス16.0%にとどまり、上位5本の中では低かった。同ファンドは主に中国国内で事業展開する上海・深セン・香港その他の取引所に上場する株式のうち、企業収益の成長性や競争力を見極め投資する。中国の証券当局が春節(旧正月)休暇明けの2月上旬に空売り禁止を口頭指示するなどの株価対策を打った結果、中国株の代表的な指数である上海総合指数の年初から最安値までの下落率が1割ほどにとどまったことが大きかったようだ。
■新興国関連の不振が続く
一方、回復度が最も低かったのは「トルコ株式オープン<愛称:メルハバ>」だった。トルコ株式に投資するファンドで、コロナショック以降にトルコ経済の脆弱性が顕在化し、リラ安が進んだことが回復を鈍らせた。「ライジング・トルコ株式ファンド」やトルコリラの通貨コースのファンドも下位に入った。同じく新興国通貨のブラジルレアルも年初から軟調で、レアル通貨コースも下位に名を連ねた。
(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)