【日経QUICKニュース(NQN) 大石祥代】個人消費への逆風が強まっている。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は11月25日、酒類を提供する飲食店の営業時間短縮や感染者が急増している地域との往来自粛などを求める提言をまとめた。東京都は同じ日に時短営業の要請を発表するなど、人の動きが再び鈍りつつある。経済活動の再開で7~9月期に急回復した景気は年末年始にかけて再び鈍化する公算が大きくなった。
■ 2.7兆円規模の消費抑制に
SMBC日興証券の宮前耕也氏は、時短営業や人々の行動自粛の影響について「実質消費で2.7兆円分の下振れにつながる」と試算する。東京都は新型コロナの感染を抑えるため、今夏に時短営業を要請していた。宮前氏によると、実質消費と似た動きをする内閣府の消費総合指数はコロナ禍前の昨年12月と今年1月の平均を基準に8月が5.7%下振れした。悪天候の影響を除くと6.6%のマイナスだったという。
東京都は11月28日から20日間の時短営業を再び要請する。これから時短営業と行動自粛が広がり「12月と来年1月の2カ月にわたって8月と同じ規模の消費下振れにつながる」(宮前氏)といい、金額換算では2.7兆円規模の消費抑制の影響が出る。
■経済回復は鈍化か
逆風はさらに強まる可能性がある。西村康稔経済財政・再生相は25日の記者会見で、今後3週間で感染増加を抑えられなければ「緊急事態宣言が視野に入ってくる」と警鐘を鳴らす。時短営業や往来自粛の効果がみえないと一段と規制を強化する構えだ。
大和総研の神田慶司氏は、政府が再び緊急事態を宣言する場合には「地域を絞った発出となり、飲食店や娯楽施設の営業自粛に加え、不要不急の外出自粛なども要請されるだろう」とみる。春先のようにサービス関連の消費が急速に落ち込み、9都道府県(東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪・兵庫・福岡・北海道)での発出の場合には実質GDPが1カ月間で2.0兆円程度、全国規模での発出となれば約3.3兆円下押しすると分析する。
民間エコノミストの実質GDP予想をまとめた「ESPフォーキャスト」によると、11日時点で10~12月期は前期比年率で4.04%増、21年1~3月期も2.46%増と緩やかな回復が続く見通しだった。だが、分科会の提言などを踏まえ「全国的に人出は減ると考えられ、再びマイナス成長に陥る可能性が高まった」(神田氏)との声が増えつつある。感染急拡大でこれまで「レ型」や「ナイキのロゴマーク型」との見方が多かった経済回復の軌道は、想定より緩慢なものになるかもしれない。