【日経QUICKニュース(NQN) 西野瑞希】金の下落が止まらない。ニューヨーク金先物相場は27日、心理的節目とされる1トロイオンス1800ドルを割り、日本時間30日の取引でも一段と下落。取引の中心である2月物は一時1767.2ドルと、中心限月として5カ月ぶりの安値を付けた。ヘッジファンドの売りが膨らんでおり、相場を押し下げている。最近はドルが下落基調にあり、ドルの代替資産とされる金は本来であればドルの動きと逆相関になりやすいはずだが、そうはなっていない。
■ヘッジファンド決算が背景に?
足元では金とドルがともに下落基調にある。ドルの総合的な価値を表すドル指数は30日、一時91.6台と2年7カ月ぶりの安値をつけた。10月末の水準(94台前半)からは2%強下落している。金はドルの「代替投資先」と位置づけられることが多いが、逆相関性は失われている。
※ドル指数(青)と金先物(赤)の推移(QUICK FactSet Workstationより)
ドル安の流れのなかで金が下落した背景は、季節的要因が大きいようだ。11~12月はヘッジファンドの決算が集中するため、持ち高調整の売りが出やすい。マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの金融・貴金属アナリスト、亀井幸一郎氏は「12月もヘッジファンドの決算は続くものの、大型ファンドの決算は11月が特に多い。11月下旬の感謝祭の休日までに売買が集中する傾向がある」と指摘する。
金融市場全体で投資家のリスク選好姿勢が強まったことも「安全資産」とされる金の売りを促した。米大統領選挙は無事に終了した。直後から新型コロナウイルスのワクチンの開発進展への期待が高まり、マネーは株式市場に流れ込んだ。年初と比べ、11月上旬時点で20%以上上昇していた金先物には利益確定の売りが膨らんだ。上場投資信託(ETF)を通じたヘッジファンド勢の売りの動きも出て、金ETFの主要銘柄である「SPDRゴールド・シェア」の保有残高は27日時点で1194トンと、10月末と比べて5%減少した。
■金相場はFOMCに注目
今後の見通しについて亀井氏は「金先物相場を見るうえで信頼度の高い200日移動平均線は1800ドル近辺に位置し、1800ドル割れは長くは続かないのではないか」と指摘した。新型コロナの感染拡大は止まっておらず、JPモルガンは20日に2021年1~3月期の米実質国内総生産(GDP)が前期比年率で1.0%減少するとの見通しを示している。今後、経済の下押し懸念が強まる場面では金相場は押し上げられそうだ。
米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和の強化に踏み切るかに注目する声もある。野村証券の大越龍文氏は「12月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)などで追加緩和策の思惑が強まれば、金相場は1800ドル台を回復するだろう」と話す。ヘッジファンド勢の売り一巡後は、金相場は反発する可能性がありそうだ。