【日経QUICKニュース(NQN) 川上純平】国内景況感の改善が鮮明だ。QUICKが4日発表した12月の短期経済観測調査(QUICK短観)で、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業でプラス2と11月調査から6ポイント改善し、今年3月以来9カ月ぶりにプラスに転じた。新型コロナウイルスの感染が再拡大するなかでも、景況感は製造業を中心に改善基調を強めている。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出する。目を引くのは製造業の改善ぶりだ。DIはマイナス4と、なお「悪い」が優勢だが、前月からの上昇幅は14ポイントとリーマン・ショック後の2009年7月調査以来11年5カ月ぶりの大きさとなった。
■製造業が押し上げる
景況感改善の背景には輸出の回復がある。日銀によれば、10月の実質輸出指数は前月比で5カ月連続のプラスとなり、新型コロナの感染拡大で大きく落ち込む前の2019年12月以来の高水準となった。工場停止や外出規制などで抑制されていた需要が顕在化しており「当面は輸出の改善が国内経済を支える構図が続く」(SMBC日興証券の宮前耕也氏)という。
今回の調査期間は11月19日~12月1日で、すでに国内外で新型コロナウイルスの感染が再拡大している中での調査だった。それでも輸出は経済が堅調な中国向けが伸びているほか、欧米向けも改善が続いており、製造業の景況感を押し上げている。自動車や半導体などの需要が全体をけん引しているとの見方が多い。
■企業側にもワクチン期待
QUICKは企業に自社の株価水準判断も尋ねている。自社株が「安い」と回答した企業は全産業で59%を占めた。日経平均株価は11月におよそ29年ぶりの高値に浮上し、月間の上げ幅は3456円(15%)と30年ぶりの大きさとなった。日経平均が急上昇するなかでも自社の株価を割安とみる企業がなお6割を占めている。
株価の上昇は新型コロナのワクチンへの期待が大きかった。市場では「ワクチンが普及して経済が完全に正常化すると景気は今よりも良くなるため、『長い目で見れば自社の株価は安い』と判断する企業は多そうだ」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)との見方がある。
一方、12月の非製造業DIは前月から横ばいのプラス5だった。政府の観光支援策「Go To トラベル」などがサービス業の景況感を下支えするものの、新型コロナの感染再拡大への懸念が重荷となっている。SMBC日興の宮前氏は「今後も感染者が高水準で推移すれば人の往来が減少し、製造業と非製造業の改善基調は明暗が一段とはっきりしてくる」と予想する。
12月の日銀短観は14日に発表される。17~18日に開かれる金融政策決定会合の直前とあって、日銀の大規模緩和政策の先行きを占う意味でも注目度が高い。企業景況感への関心が高まりやすい局面だ。