【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】4日の東京株式市場で、足元で騰勢を極めていた半導体関連株の上昇に一旦ブレーキがかかった。上場来高値を更新していた東エレク(8035)に売りが出ているほか、アドテスト(6857)も4営業日ぶりに反落した。ただ、朝方下げていたSUMCO(3436)は午後に切り返し、今日も上げれば16日続伸と歴史的な続伸記録となる。急ピッチで上昇してきた半導体関連株の今後の見通しはどうか。半導体用途の広がりに加えて、新しい技術の採用が加速度的に早まるなか、半導体関連株には引き続き前向きな見方が多い。
■総じてモメンタムは強い 過剰発注や過剰調達ないか注視
アセットマネジメントOneの岩本誠一郎ファンドマネジャー
半導体関連については全般的に方向は上向きだ。デバイスや車載向けを含め、今後も電動化や大容量化は一層進んでいくだろう。高速通信規格「5G」の広がりなども踏まえれば、総じてモメンタムは強い。新技術を取り入れていくことを考えれば、電子材料も魅力的だ。
足元でやや行き過ぎの銘柄もあるが、今後の成長見通しを踏まえれば、PER(株価収益率)で22~25倍程度は十分説明ができる範囲だ。リスクとしては市場全体で先行発注が進みすぎていないか。中国や韓国で、特にスマホ向けなどの生産計画が強いように感じる。今後、過剰発注や過剰調達などが出てこないかどうかを注視している。
■半導体関連の設備投資、スーパーサイクル入り
岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリスト
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や在宅勤務の定着で情報通信量は拡大し、データセンター向け需要の拡大が見込まれる。新型コロナウイルスで遅れていた「5G」への移行が進んでいけば情報通信量はさらに増えるだろうし、もちろんパソコンやタブレットにも半導体は搭載されている。
韓国サムスン電子や台湾積体電路製造(TSMC)、米インテルなどは今後、巨額の設備投資を予定している。半導体関連の設備投資が3~4年程度、直線的に右肩上がりを続けるスーパーサイクルに入った可能性がある。業界再編の動きもあってシリコンウエハーの半導体材料も堅調だ。高稼働が続いており、EUV(極端紫外線)用レジストの需要拡大などで信越化(4063)はトップメーカーのポジションを維持するだろう。
懸念材料として挙げるとすれば、米グーグルなど「GAFAM」と呼ばれるIT大手各社への政治的な介入だろう。サーバー投資が鈍れば装置の需要にも短期的には影響するかもしれない。もっとも、以前に比べて半導体の裾野は広がっている。EV(電気自動車)や風力発電など環境関連にも半導体は欠かせない。様々な産業で効率性や環境配慮を進める流れのなか、最適なマネジメントのためにデジタル技術は不可欠だ。半導体の汎用性が広がっており、需要が増えることはあっても減ることは見込みにくい。力強い成長が続くとみるなら、PERで20倍台に過熱感はない。利食い売りをこなしながら、今後もじりじりと株価は上昇していくのではないか。
※日本の半導体関連株は騰勢が強い(2019年末を100として指数化)
■もう一段の市場の成長が期待 株価への織り込みはかなり進捗
大和証券の杉浦徹シニアアナリスト
ファンダメンタルズ面からは来期、さらにその先も半導体市場は堅調さを維持するだろう。2020年は半導体受託生産(ファウンドリー)の環境が堅調だったが、来年はDRAM投資の拡大が見込まれており、もう一段の市場の成長が期待できそうだ。新型コロナウイルスの影響で20年前半は需要が鈍化していたが、夏場以降は本格回復している。メモリ関連を主体に装置関連も拡大するだろう。
今後、5G対応のスマートフォンが本格的に出てくれば、より先端のアプリケーションプロセッサーが必要になってくるだろう。データセンターへの投資継続で、ハイエンドサーバー用のCPUメモリも必要になる。半導体用途の広がりに加え、一つ一つに含まれる数も増えていることから市場の拡大は続きそうで事業環境は良好だ。
一方、株価は急ピッチに上昇しており、バリュエーションやヒストリカルをみても高い水準にある。成長のビジビリティ(見通し)が高まっているので、期待が先行しすぎているということはないが、株価への織り込みはかなり進んでいると言えるだろう。供給過剰によるNAND市況の悪化をやや懸念している。市況の悪化が続くと、メモリーメーカーの収益性が鈍化する可能性も想定される。