【日経QUICKニュース(NQN) 神能淳志】日米で超長期の国債利回りの上昇(価格の下落)が続いている。新型コロナウイルスの感染は世界的に再拡大し、追加経済対策に伴う国債増発への思惑が、償還までの期間が長い超長期国債の金利上昇を促している。歯止めをかけると期待される中央銀行が「容認」の姿勢を貫いていることも超長期の金利上昇に拍車をかけているようだ。
■日銀は買い入れ額維持
7日の国内債券市場では、新発30年物国債の利回りが上昇した。中期や長期の国債利回りが横ばい圏を保つなかで30年債利回りは0.655%と前週末から0.005%上昇。2019年1月以来の高水準となる0.660%を再び試している。米国でもイールドカーブ(利回り曲線)の傾きのスティープ(急勾配)化が鮮明で、QUICKのデータでは30年と2年債の利回り差は4日に1.59%程度と2017年5月以来の大きさとなった。
※米国のイールドカーブ。年限が長くなるほど上昇傾向が鮮明
日米ともに追加の景気対策に向けた国債増発への警戒がくすぶる中、「中銀は巨額の国債買い入れで金利上昇を抑える」。市場の常識になっているこんな考えも超長期債については事情が違うようだ。日銀が7日実施した残存期間「25年超」を対象にした国債買い入れオペ(公開市場操作)では購入通知額は300億円だった。前回11月30日には応札額を落札額で割った応札倍率が7倍台と、「25年超」の区分ができた14年以降での最高を記録していたが、日銀は買い入れ額を維持した。
米連邦準備理事会(FRB)も超長期債の利回り上昇には寛容だ。ロイター通信によると、シカゴ連銀のエバンス総裁は4日開いた会合で、足元の資産買い入れ策について「快適だ」と説明した。そのうえで、債券の買い入れ策については「今のところ変更の必要性はない」と述べるなど、発言からは利回り上昇を抑えようとする意欲が伝わってこない。
■超長期債は発行増額も
米金利上昇で国内債の利回りも上昇するのは超長期債でも同じ。日本証券業協会のデータでは、外国人投資家による超長期債の売買高は今年度が10月までで22兆円強と、主要な投資家とされる生損保(7兆円強)の3倍あまりだ。「とりわけ生命保険各社は入札などを通じて利回りを押し下げないように買う投資家で、流通市場では海外投資家の売りが利回り上昇につながりやすい」(野村証券の中島武信チーフ金利ストラテジスト)という。
国内では菅義偉政権が経済対策を8日にも閣議決定する予定だ。財務省は11日に国債市場参加者特別会合を開くなど、2020年度第3次補正予算案や21年度予算案での国債発行計画の議論も佳境を迎えつつある。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは3次補正での国債発行額について、20兆円超の予算規模を前提に通常の入札によるカレンダーベースの市中発行額が2次補正予算から5兆円弱増えると予想。大半を短期国債や前倒し債の発行で賄うが、40年債は年度内に増発するとみる。
加えて、21年度当初予算案では全体の発行額は3次補正後の20年度よりも減るが、減額は短国などが中心で20年と40年債の発行額は増えるとみる。「足元の水準は超長期債の増発を完全に織り込んだとは言えず、短期的に利回りが一段と上昇する可能性がある」(稲留氏)。国債増発を巡る議論は固まっていないが、米国での金利上昇が止まらなければ海外勢の売りは続きやすく、目先はスティープ化が続くとの見方は増えている。