【日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥】KDDI(9433)が9日発表した新料金プランに失望の声が出ている。NTTドコモ(9437)の出してきた格安プランにどう対抗するか注目されていたが、むしろ割高との声も一部で聞かれる。ソフトバンク(9434)や楽天(4755)が今後どう対応してくるのかも注目だ。ドコモの新プランが始まる来春に向け、各社がどんな対抗策を打つのか。戦国時代を迎えた「料金プラン合戦」に市場は熱視線を送る。
■ドコモのインパクトに勝てず
「競合他社と比べ競争力があるとは言い難い」。KDDIの新プランについて岡三証券の担当アナリスト、奥村裕介氏はこう指摘した。9日の新プラン発表後にKDDI株は下落した。10日は反発こそしているが前日の下げに比べれば戻りは鈍い。
その新プラン。従来料金から追加料金なしで「アマゾンプライム」サービスを利用できるのが売りで、東海林崇副社長が記者会見で「月額3760円から提供する」と胸を張ったもの。ただ、料金の割引には家族割引や「5Gスタート割」などの細かい条件が必要で、割引を適用しない価格は月額9350円。特に単身者に厳しい内容で利用者からの評判は芳しくない。
失望の声が強かったのは、NTTドコモが3日に打ち出した格安プラン「ahamo(アハモ)」のインパクトが大きすぎたゆえだ。月間20ギガ(ギガは10億)バイトのデータ容量で月額2980円。音声通話は1回5分までかけ放題で、新規契約事務手数料なども無料。割安な通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)、いわゆる格安スマホと遜色ない内容となっている。
※通信各社の株価を2019年末を100として指数化
NTTドコモの「ahamo」に対する市場の評価は高く、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の田中秀明シニアアナリストは3日付リポートで「他社比優位のサービスで、新型コロナウイルスの影響が終息した後は訴求力が高まる」とした。正式発表翌日の4日にKDDI1.3%安、ソフトバンク1.3%安、楽天7.3%安と売り込まれたことが証明している。
加えて「NTT(9432)という巨艦を後ろ盾にするNTTドコモが本気を出せば対抗するのは難しいとの心理が投資家に働いた」(国内証券の投資情報担当者)という。KDDIが9日に発表した新料金プランはこうした見方を一段と強めることになった。
■対抗策はこれから
ただ、携帯料金競争の本格化はこれからだ。ahamoが始まる3月までに、各社は対抗策を出してくる可能性が高い。
「料金プランに関しては、さまざまな検討を行っている」(KDDIのIR担当)と話すように、「ahamo」に同業他社が対抗策を出そうと知恵を絞っている。今回の主役となったNTTドコモですら、「既存プランの見直しを12月中にあらためて発表したい」(IR担当)と話す。業界全体の課題としてメインブランドで格安プランを打ち出した場合、サブブランドとの共存をどうするのかという課題も残る。そのサブブランドへの移行手数料は各社が引き下げや撤廃に向けて動きが活発化している。
携帯料金値下げ競争による業績への影響は現時点で不透明だ。値下げや、利用者が安いプランに乗り換えるなどで1人当たりの平均料金がどこまで下がるかがポイントだ。UBS証券の高橋圭アナリストは9日付リポートで今後について、「各社内部におけるダウングレードをどれだけ抑えられるかの知恵比べになる」と指摘。通信株への懸念は「値下げが出そろうまでしばらく続く」とした。
格安スマホを提供する日本通信(9424)は10日から、「ドコモへの対抗プラン」と自称する月額1980円のプランの提供を始めた。大手に揺さぶりをかけようとしている。
体力勝負となればNTTドコモ=NTTが有利との見方は多いものの、同業他社からすれば黙って見ているわけにはいかない。厳しい評価が下されたKDDIの巻き返しなど、本格決戦はこれからだ。