【QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎】東芝(6502)が12月3日にオンラインで開いた2020年度技術戦略説明会では「炭素」、「VPP(仮想発電所)」「インフラ」などが焦点になっていたことがわかった。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
技術開発部門トップの石井秀明執行役常務は中期経営計画「東芝Nextプラン」において、現状は「フェーズ2」の「インフラサービスカンパニーとしての安定成長」を目指す時期であると定義した。そのうえで脱炭素化、インフラ強靭(きょうじん)化、(新型コロナウイルス後の)ニューノーマルに対応するための技術戦略を説明した。
脱炭素化について、石井常務は「メガソーラー、水力発電設備では国内トップの実績で、可変速揚水発電では世界トップシェア、地熱用の発電タービンでも世界トップクラス」だと強調した。エネルギー利用では「SiC(シリコンカーバイド)パワーデバイスや高効率モーターに、(自社開発のリチウムイオン2次電池である)SCiBを組み合わせた省エネ鉄道駆動システムや二酸化炭素(CO2)資源化技術などを実用化開発している」と多様な取り組みを紹介した。
再生エネルギーの主電源化に向け、再生エネルギーや蓄電池など分散電源を束ねて一つの発電所のように運営するVPPを中心とするエネルギー調整技術に関する開発も進行中だとも説明した。気象情報とAI(人工知能)技術を組み合わせて再生エネルギーの発電量や需要の高精度な予測を可能としており、電力の需給バランスの最適化が実現可能だと述べた。
実世界(フィジカル)のデータをデジタル技術で収集し、サイバー空間で分析・活用し実世界に付加価値をもたらすサイバー・フィジカル・システム(CPS)テクノロジー企業を目指し、研究開発費も一段と積み増す。国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、パリ協定実現のために必要となる世界のエネルギー関連投資は年間80兆円規模から140兆円規模に膨らむ。石井常務は「再生エネルギー関連に今年度は約170億円、(同部門の)売上高比率で約10%を投資しており、今後さらに強化する」との方針を明らかにした。
デジタル技術の責任者である山本宏・執行役員常務は「東芝サイバー戦略2020」として、より具体的な事例や2025年に向けたビジョンを説明した。東芝が社会インフラに注力する理由として「社会インフラは東芝のDNA(遺伝子)、経営理念そのもの」と指摘。膨大なシステム導入実績と30年から60年にわたる長い運用期間に、新型コロナウイルスなど顧客が対応せざるを得ない外的要因の発生で莫大な事業機会があるとの認識を示した。そのうえでこうした事業機会を刈り取るラインナップが揃ったのが社会インフラを焦点とする要因だと強調した。