【QUICK Market Eyes 大野弘貴】エバコアISIは21日付リポートで2020年の相場について、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに対する世界的で大規模な財政・金融面での対応により、急激な景気後退は短期間でとどまったと回顧。また、迅速なワクチン開発により、長期的な成長期待が高まり、新たな企業投資と雇用が促進されたとも指摘。さらに、実質利回りがマイナスとなり、予想を上回る利益成長とキャッシュ・リターン予想の上昇が、資産価格を押し上げたと振り返った。
株価と住宅価格の上昇が相まって、米国の消費者の純資産は記録的な水準に達し、記録的な貯蓄を取り崩そうとしているとの見方も示されている。
■エバコアの21年の展望
20年を振り返ったうえで、リポートでは21年の展望について下記の通りの見方が示されている。
・ワクチンと経済正常化への回帰
複数の強力なワクチン治験の結果と迅速な本格展開により、1億回分ものワクチンが21年1~3月に接種され、21年上半期には多くの地域で集団免疫を獲得しだすことが期待されている。
より急速な成長を見越した企業投資と、高い貯蓄率をもとにした消費者需要により、21年下半期に消費ブームが到来する可能性がある。
・実質金利のマイナスが資産価格の上昇を支える
成長の加速、不確実性の低下、超緩和的な措置によってもたらされた実質マイナス利回りがボラティリティを低下させ、資産価格を支える。インフレではなく実質成長の改善による債券利回りの上昇も循環的な回転を支える。
・21年末のS&P500は4110、1株利益(EPS)は176ドルを予想
企業投資の増加、歴史的にみて低い債券利回り、キャッシュ・リターンの増加センチメントおよび消費者需要の活性化は、21年を通じて成長と収益に上向きの圧力をかける。経済テール・リスクとボラティリティの低下は、リスク資産の魅力を高める。
・消費者向けシクリカル・バリュー、新興市場を選好
景気循環株は、パンデミック主導の売りの矢面に立たされたが、投資家が21年にパンデミック以前の経済状況に戻る可能性を過小評価している。価格水準が調整されるまでは、一般的にバリュー株ががアウトパフォームする。
■S&P500のEPS予想を上方修正、引き続き大型・テック株に妙味=ドイツ銀
ドイツ銀行は12月3日付リポートで、S&P500の1株利益(EPS)について、2020年を141ドル、21年を194ドルと予想した。従来予想の133ドル、173ドルからそれぞれ上方修正された。21年末のPER(株価収益率)は20.5倍と見込んだ。EPS×PERから、21年末のS&P500種株価指数は約4000と算出される。
今年の株式市場の回復パターンは、「景気後退の半ばで底を打ち、その下落のほとんどが景気後退終了前に取り戻すという典型的なものであったが、継続的な株価上昇はバリュエーションが高いことを意味する」と指摘。引き続き、個人投資家が市場に参加することで高いバリュエーションが実現すると見込んだが、株式の収益率は徐々に低下するとの予想も示された。
セクター別では、大型成長株とテック系企業で最も強い株価上昇が実現し、次いでディフェンシブ、シクリカルセクターのパフォーマンスが続くとの見方も示されている。
<金融用語>
シクリカルとは
シクリカルとは、英語表記はCyclical。循環的な景気変動のこと。代表的なものに、景気の回復、拡大、後退、悪化が繰り返し表れるビジネスサイクルがある。株式市場において、景気の変動によって上昇したり下落したりする銘柄をシクリカル銘柄(景気敏感株)という。