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株価指標「PER」の見方を解説 指標の意味、計算式、PBRとの違いは?銘柄・業種別ランキングも紹介

【QUICK Money World 辰巳 華世】日経平均株価が終値で2万7000円台を回復し、およそ30年ぶりの高値を更新するなど、最近の株式相場から目が離せません。株価が上昇する中、投資家にとって、今の株価が「割高」なのか「割安」なのかはとても気になるところです。株価が妥当な水準なのかどうか判断する投資指標の一つにPERがあります。PERの基本的なことから、投資判断に使う時のポイントまで徹底解説します。

■PERとは

PERとは、Price Earning Ratioの略語で、日本語では株価収益率といいます。PERは企業の現在の株価が「割高」か「割安」かを判断する時に使われるもので、最も有名な投資指標の一つです。証券会社の「銘柄ページ」などでPERを目にしたことがあると思います。

PERの計算式は、「株価÷1株当たりの利益」で、単位は(倍)です。1株当たり利益は、損益計算書(P/L)の当期純利益を発行済株式数で割ったものです。株価を一株当たり利益で割ることで、PERは「1株当たり利益の何倍まで株価が買われているか」を示しています。

多くの企業は決算を発表する際、利益について実績の数字と予想の数字を発表します。株式投資は先行きに対して買ったり売ったりする性質があるので、一般的にPERは実績ベースより予想ベースの方が注目されます。

具体的な数字を入れてみてみましょう。例えば株価が1000円で、予想1株当たり利益が100円の場合、PERは1000円÷100円=10倍。この場合、PERは10倍となります。

 

■PERが誕生した背景

PERは現在の株価が「割高」か「割安」かを判断する指標として有名ですが、実はPERを違う視点から見ることもできます。

会社には倒産リスクがあります。投資家にとって投資したお金をできるだけ早く回収する、何年で元が取れるかはとても気になるところです。その投資元本を回収するのに必要な年数の目安として「PER」という考え方があります。

PERを「年数」とみる考え方を見てみましょう。PER10倍とは、先程の数字でいえば、予想1株当たり利益100円の10倍の1000円まで株が買われています。言い換えれば、1000円でこの株式を購入し、年100円の利益を稼ぐとすれば、10年で投資回収できると考えられます。PERを投資を回収するまでの「年数」と考えるのです。

PERは数字が大きいほど割高、数字が小さいほど割安といわれています。PER10倍と20倍とは、10年で回収、20年で回収と見ることもできます。10年と20年であれば、10年の方が早く回収ができるということです。期間が短い方、つまり、数字が小さい方が早く回収ができます。この様に考えるとPER10倍の方が割安であるということがイメージしやすいと思います。

■PERの目安とは

2020年末時点の東証一部全銘柄の平均予想PERは28.1倍です。一般的にPERで「割高」、「割安」を判断するとき、東証一部全銘柄の平均PERを一つの目安として使うことがあります。ただ、これはあくまでも目安です。業種によっても平均PERは異なりますし、必ずしも全体と比べることが適しているとはいえません。

※東証1部・全銘柄:予想PER(会社予想)

また、PERだけで「割高」、「割安」を判断するのは性急です。なぜなら、PERはあくまで今期予想の利益ベースで考えた結果だからです。その数字には安定性や今後の成長性などは含まれていません。今期予想の利益とは、今年はこれくらいの利益がでますという足元の予想数字です。来期以降にそれだけの利益がでるかは分かりません。PERはあくまで直近予想に対して株価が何倍まで買われているかを示しています。なので、株価の「割高」、「割安」の判断は、PERだけでなく利益の安定性や今後の成長性など総合的に考慮して判断する必要があります。

利益の安定性や今後の成長性を加味した上でPERをみると、銘柄によってはPER40倍でも「割安」に見えるものがあります。それは、その企業の将来性が期待されて買われていると考えることができるからです。仮に今期の利益が4倍に成長するのならば、実質的PERは10倍だと市場は見ているわけです。逆に、PER10倍でも「割高」に見える銘柄もあるわけです。一般的にPERが高い銘柄は、「利益の成長性が高い」「利益が安定的」「特別損失によって一時的に利益水準が低い」と見られている傾向があります。一方、PERの低い銘柄は、「利益の成長性が低い」「利益が不安定」「特別利益によって一時的に利益水準が高い」と思われている傾向があります。

業種によってもPERの平均値は大きく変わります。やはり、利益の変動が激しい業種や、利益成長が期待しにくいとされる業種は、PERの平均値も低くなっています。

▼業種ごとにPERの平均値は大きく異なる

業種 予想PER
精密機器 123.529
サービス業 44.243
機械 43.487
非鉄金属 41.213
輸送用機器 40.258
小売業 39.889
化学 33.451
繊維製品 30.966
医薬品 29.69
その他製品 28.741
電気機器 28.408
全銘柄 28.111
金属製品 24.391
食料品 22.885
石油・石炭製品 22.778
ガラス・土石製品 21.373
卸売業 18.265
情報・通信業 17.644
水産・農林業 16.855
不動産業 16.531
パルプ・紙 15.91
電気・ガス業 13.282
海運業 13.06
その他金融業 12.746
証券商品先物 12.612
保険業 11.57
建設業 11.282
倉庫運輸関連 11.105
銀行業 9.944

※2020年末時点の業種別平均PER(算出不可の業種は除外)

このようにPERは、数字が高いから「割高」、低いから「割安」とは言い切れません。平均値や他の企業と比べることもあくまで一つの目安にしかなりません。PERで「割高」、「割安」を見るならば、PERを計算する時に使われる今期予想の利益が一時的なものなのか、それともこの先も安定的または成長して推移するものなのか、その背景を分析していくことが大切になります。

  • 数字が大きいならば、利益の成長期待が高いのか、一時的な利益低下で大きくなっているのか。成長期待が高いとすれば、それは裏付けのある期待なのか
  • 数字が小さいならば、利益の成長期待が低いのか、利益が不安定だったり、一時的なものだと思われているのか

こういった視点でチェックしていくことで、初めて使える指標になると言えます。

▼2020年末時点の予想PER(日経平均採用銘柄、会社予想ベース)

高い順 順位 低い順
銘柄コード 銘柄名 PER 銘柄コード 銘柄名 PER
5301 東海カ 550 1 8795 T&D 5.8
7013 IHI 304 2 3103 ユニチカ 6.0
4568 第一三共 129 3 1802 大林組 6.8
3105 日清紡HD 125 4 1808 長谷工 6.9
4751 サイバー 112 5 8308 りそなHD 6.9
6103 オークマ 101 6 9301 三菱倉 6.9
6770 アルプスアル 93 7 4043 トクヤマ 7.3
6506 安川電 86 8 5233 太平洋セメ 7.6
9602 東宝 86 9 8253 クレセゾン 7.7
6703 OKI 79 10 8304 あおぞら銀 7.8

■PBRとの違いは何?

PERと似た投資指標にPBRがあります。PBRも株価の妥当性を判断する投資指標です。PBRとは、Price Book-value Raitoの略語で、日本語では「株価純資産倍率」と言います。PBRの計算式は、「株価 ÷ 一株当たり純資産」で、単位は(倍)です。

純資産とは具体的には貸借対照表(B/S)の「資本金」、「資本剰余金」、「利益剰余金」になります。株主からの出資金やこれまでの利益の蓄積などを足し合わせたもので、返済する必要がないお金になります。自己資本とも呼ばれています。PBRは純資産をベースに計算するので、「株価に対してどれくらいの資産を持っているか」を判断する指標です。

 

PBRの目安は1倍です。PBRが1倍ということは、株価と1株当たり純資産が一致していることになります。これは投資先の企業が解散しても理論上は投資したのと同じ金額が戻ってくることを意味しています。PBRが1倍よりも大きい時は、株価がその企業の1株当たり純資産より高く「割高」になっています。PBRは数が大きい程、割高となります。

ただ、PBRが1倍を下回っているから「割安」とは言えません。PBRが1倍割れの時は注意が必要です。一般的に、PBR1倍割れ、株価が1株当たり純資産より低い状態で放置されることはありません。PBRが1倍を下回る状態が続いているということは、保有資産の大幅な含み損・減損の懸念といった何かしら問題がある状況であると考える方が妥当であり投資するなら気をつける必要があります。

※東証1部・全銘柄:実績PBR

PERとPBRは株価の妥当性を判断するという点でとても似た投資指標です。違いは、PERは純利益ベース、PBRは純資産ベースで見ている点です。PERでは、企業が出す利益に対して株価が妥当かどうかが分かります。PBRは、企業が持つ資産に対して株価が妥当かどうかが分かります。どちらも投資をする上で役立つ投資指標です。ただ、どちらも絶対的なものではありません。株式投資はさまざまな情報から分析し総合的に判断することが大切です。

■まとめ

PERは、1株当たり利益の何倍まで株価が買われているかを示す投資指標です。PERは、株価の「割高」「割安」を示す最も有名な投資指標の一つですが、絶対的なものではありません。投資をする際は、いろいろな角度から総合的に判断して投資するよう心がけましょう。

 

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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