【NQNニューヨーク=張間正義】2020年の米国株相場は新型コロナウイルスの感染拡大で3月に急落した後、政府の巨額の経済対策や米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和を支えに急速に持ち直した。21年は新型コロナワクチンの普及に伴って米経済は年後半に回復が強まり、株式相場も上昇基調となりそうだ。FRBの金融緩和の継続も株式市場への資金流入を促す。
■適温相場がメーンシナリオ
新年相場について、バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネット氏は「低金利と景気回復が両立する適温相場がメインシナリオ」と説く。FRBは20年8月、物価上昇率が一定期間、目標の2%を超えることを目指す新指針を打ち出した。FRBは2%超えは23年以降と予想しており、それまではゼロ金利政策を続ける見通しだ。実際、21年も物価は構造的に上がりにくい状況が続く。米国野村証券の雨宮愛知氏は、新型コロナで都心から郊外へ居住地を移す流れが強まる中、「持ち家の帰属家賃が下落し、本格的なディスインフレになる」と指摘する。
FRBは国債などを月1200億ドル買い入れる量的緩和についても20年12月に指針を見直し「雇用最大化と物価安定の達成が近づくまで購入を続ける」と長期化を示唆した。米運用会社ブラックロックは21年の相場テーマに「より多額の財政赤字、FRBの(金融市場への)一段の介入」を挙げた。「Fed(FRB)に逆らうな」の格言通り、金融市場のリスク選好が強まるとみる。
ウォール街の主要金融機関は来年末のS&P500種株価指数を4000前後と予想している。現在から8%前後上昇することになる。企業業績に強気なJPモルガン・チェースは4400、ゴールドマン・サックスは4300まで上昇するとみる。
■持ち直す企業業績
ワクチンの普及も相場上昇を後押しする。米国では春ごろには一般の国民にも接種が広がる見通し。感染拡大が収束に向かい、年央以降の経済回復を見込む声は多い。モルガン・スタンレーは21年の実質国内総生産(GDP)を5.9%増と予測する。実現すれば37年ぶりの高成長となる。コロナ禍からの景気回復で先頭を走る中国に、欧米や日本の景気回復も加わる「世界同時回復」(エバコアISI)が期待されている。
企業業績も持ち直す。主要500社の純利益は前年比22%増と20年の14%減から大幅増益に転じる。売上高も7.9%増と、1.8%減だった20年から増収に転じる見込みだ。一方、高いバリュエーション(投資尺度)は相場の重荷だ。今後1年間の利益予想に基づくPER(株価収益率)は主要500社で22倍と00年以来の高い水準にある。業績改善を期待先行で織り込んだ分、改善ペースが鈍いと分かれば相場調整につながりやすい。
1月20日に発足するバイデン政権も公約に掲げる増税より、コロナ禍からの経済回復を優先する政策運営に徹しそうだ。政権の経済政策を占ううえで、1月5日のジョージア州での上院決選投票は注目される。当初は2議席のうち1議席は共和党が確保して上院で過半数を維持するとみられていたが、にわかに民主党候補が巻き返している。民主党が2議席とも取れば、大統領と上下両院の過半数を同党が制する「ブルーウエーブ」が実現する。そうなれば3月にも1兆ドル規模の追加経済対策がまとまるとの観測もあり、短期的には相場の追い風になるだろう。
業種別では景気回復やバイデン政権の経済政策を背景に、景気敏感株を中心にしたバリュー(割安)株の優勢が予想される。強気で鳴らすファンドストラットのトーマス・リー氏は「一般消費財・サービス」「エネルギー」「資本財・サービス」を有望3業種に挙げる。グロース(成長)株の代表であるハイテク株も低金利が続く中では簡単に崩れそうにない。ただ、コロナ禍で巣ごもり消費や在宅勤務の恩恵を強く受けた銘柄には注意が必要で、ハイテク株の中で明暗が分かれるとの見方もある。
=(2)に続く