【QUICK Market Eyes 阿部哲太郎】主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDIは、金融を含む全産業ベース(12月末時点)でプラス22と、前月のプラス21から1ポイント改善した。改善は6カ月連続となったが、改善幅は鈍化した。業種別では16業種中9業種が前月から改善した。
■16業種中12業種がプラス圏
製造業DIは前月から1ポイント悪化のプラス26とわずかながら悪化した。資源高や景気回復期待を背景に鉄鋼がプラス34、非鉄金属がプラス50とどちらも前月のゼロから大幅に改善した。先行して改善していた電機はプラス34と10ポイント悪化、輸送用機器はプラス63と16ポイント悪化となった。
非製造業DIは1ポイント改善のプラス17と微増となった。建設、情報通信・卸売、銀行が改善した。特に銀行はプラス13と35ポイント改善となった。一方で新型コロナウイルスの感染再拡大などが懸念され不動産、小売、サービス、その他金融などは悪化した。
算出対象の16業種中でDIがプラスの業種は食料品、化学、鉄鋼、非鉄金属、機械、電機、輸送用機器、情報・通信、卸売、小売、銀行、その他金融の12業種だった。一方、マイナスの業種は医薬品、不動産、サービスの3業種、ゼロは建設の1業種だった。
■鉄鋼、非鉄金属、銀行の改善が顕著
DIの改善した鉄鋼、非鉄金属、銀行の各業種について3カ月前比でQUICKコンセンサスの純利益の上方修正幅が多い銘柄をリストアップした。
鉄鋼業で改善幅が大きかったのは、神戸鋼(5406)やJFEホールディングス(5411)などが上位となった。中国の景気回復による需要増、自動車市況の好転を背景に鋼材市況が強含んでいる。
ゴールドマン・サックス証券は、5日付のリポートで中国の鉄鋼について自動車を中心とした需要拡大や設備投資マインドの回復、インフラ向けの伸びを見込み、鉄鋼業全体で高稼働が続き、鉄鋼需給のタイト感が続くと予想した。日本メーカーの輸出向け鋼材スプレッドも改善が続くとし、輸出比率の高いJFEHDの投資判断を引き上げた。
非鉄金属では、三菱マテリアル(5711)、住友金属鉱山(5713)、住友電気工業(5802)などがランクインした。鉄鋼同様に資源価格の上昇や自動車市況の回復の恩恵が強い、住友電は、自動車向けワイヤーハーネスやデータ通信の増加や次世代通信規格(5G)によるネットワーク増強への期待から高付加価値の光ケーブルの拡販への期待も続いている。
銀行業では、ゆうちよ銀行(7182)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)などが上位となった。米国の期待インフレ率の上昇などもあり、金利の先高観測も出ている中、日本の銀行株は出遅れが目立っている。
野村証券は20年12月22日のリポートでみずほの目標株価を引き上げた。理由として米国の法人・投資銀行部門など好調な顧客部門収益や新システム施行後の経費削減効果などの継続に期待しているようだ。
◆QUICKコンセンサスDIとは◆
アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出する。DIがマイナスなら、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っていることを意味している。5社以上のアナリストが予想している銘柄が対象で、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかが分かる。