【日経QUICKニュース(NQN) 末藤加恵】外国為替市場でオーストラリア(豪)ドルが上昇している。6日には対ドルで1豪ドル=0.78米ドルに接近し2018年4月以来、2年9カ月ぶりの高値を付けた。豪ドルを押し上げているのは、資源価格の世界的な上昇だ。通貨高は同国の輸出産業に打撃となるため、当局によるけん制で潮目が変わるとの見方も出ている。
対円相場は日本時間6日午後に80円台に乗せ19年4月以来、1年9カ月ぶりの高値を付けた。豪ドルは、投資家が積極的に運用リスクを取る「リスクオン」に傾くと買われやすい通貨の代表格だ。米連邦準備理事会(FRB)の大規模緩和などで米ドル売りの勢いが増しており、新型コロナウイルスのワクチン開発などによる景気回復の期待もあって豪ドルは水準を切り上げてきた。
■資源高で買い安心感
資源高の目先的なきっかけとしては、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国による「OPECプラス」が原油の減産で合意し、その後にOPECの「盟主」サウジアラビアが自主的な大幅減産を5日に表明したことが大きい。長期的にはカネ余り相場の長期化が、ドル建てで取引される資源価格を押し上げてきた。
豪州の主な輸出品である鉄鉱石の価格も上昇の勢いを保つ。指標となる鉄分62%のオーストラリア(豪)産鉄鉱石の中国向け価格は5日時点で1トン163ドル超と11年以来、10年ぶりの高値圏となっている。ロンドン金属取引所(LME)の銅先物3カ月物は5日、一時1トン8050ドル台と13年以来8年ぶりの高値を付けた。
ソニーフィナンシャルホールディングスの石川久美子シニアアナリストは「資源国かつ先進国の通貨である豪ドルは、相対的に買い安心感がある」と話す。コロナワクチンの普及に伴う景気回復期待やドル安基調が続けば、3月末までに1豪ドル=0.81米ドル台まで上値余地があるとみている。
■通貨高けん制
一方、市場関係者の間では豪州当局が通貨高のけん制に動くのではないかとの思惑も出ている。豪州は輸出産業を援護するため、もともと自国通貨安を志向してきた。オーストラリア準備銀行(豪中央銀行)はここまで主要国に比べ金融緩和に消極的とみられ、豪ドル高を事実上容認してきた。「これ以上豪ドル高が続くと、金融緩和を強化するなどして通貨高のけん制に乗り出す可能性がある」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)という。豪ドル相場の今後の上値は、当局の出方次第という側面もありそうだ。